20代ほど「がん検診の被曝リスク」が高い理由 健康のために「健康を害する」日本人の盲点

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日本でも医療法施行規則が改正され、X線装置などを備えるすべての病院・診療所に対して患者さんの医療被曝の線量を管理・記録することが義務づけられました(2020年4月1日施行)。

さて、X線検査が含まれるがん検診について、海外では生涯で受ける検診回数が検討材料として上がっています。がんごとに検診が必要な年齢を何歳から何歳と区切って、間隔も開ける。そうすることで「医療被曝」という検診の不利益を抑えようとしているのです。

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我が国はどうかというと、がん検診の不利益を検討する段階にはまだ到達していません。つまり、検診対象年齢になったら自動的・定期的にX線検査を受け続けることになるわけです。

X線検査の話ばかりになりましたが、CT検査も被曝リスクがあります。CT検査はX線を使って身体の断面図を撮影するもので、得られる画像は鮮明なのですが、その分、浴びてしまう放射線量も多くなってしまいます。

その検査、本当に必要ですか?

死亡率を下げるデータがないことから、CT検査は自治体のがん検診ではすすめられていないにもかかわらず、日本は世界で一番CTの数が多い国です。国によっては大学病院など一部の特別な病院だけしか所持できないようにCTの数を制限していますが、日本では街のクリニックでも普通に導入しているので「世界一のCT大国」になってしまいました。これだけCT検査が一般的になると、「よそはあるのに、うちにないのも具合悪いな」と導入してしまうのでしょう。

皆さんが検診を受けるときにも、「あの人も受けているから自分もCTやっとこう」と流されてしまいそうになるかもしれません。

でも、ちょっと立ち止まって考えてほしいのです。ご自身の年齢と被曝リスクを秤にかけて「本当に必要な検査か」どうかを判断してください。

中山 富雄 国立がん研究センター検診研究部部長

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なかやま とみお / Tomio Nakayama

1964年生まれ。大阪大学医学部卒。大阪府立成人病センター調査部疫学課課長、大阪国際がんセンター疫学統計部部長を経て、2018年から国立がん研究センター検診研究部部長。NHK「クローズアップ現代」「きょうの健康」、CBCテレビ「ゲンキの時間」などのテレビ番組や雑誌などを通じて、がん予防、検診に関する情報をわかりやすく伝える活動を行っている。

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