20代ほど「がん検診の被曝リスク」が高い理由 健康のために「健康を害する」日本人の盲点

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国の施策に関連する研究をしながら、患者さんの急変で夜中に呼ばれることも多々ありました。がん予防やがん検診はがんの入り口、患者さんの看取りや遺族のケアというがんの出口まで対応したのは、今から考えると、よくぞそこまで……と思います。

でも、臨床と研究の両輪で走ったおかげで検診と治療のつながりが見えるようになり、取り沙汰されることがなかった検診の「不利益」にも意識が及ぶようになったのです。

若い人ほど「放射線被曝」には注意

検査とは時間がかかるものです。当日の待ち時間もそうですが、結果が出るまでにも日数がかかります。どうやったって「時間」は払わなくてはいけませんが、それは検査の「必要経費」。皆さんも納得できるでしょう。でも、がんを見つけるための検査で、身体や心にダメージを受けるとなると、それが「必要経費」と言えるでしょうか。

がん検診は職場や自治体、人間ドックで受けることができます。最も基本的なメニューは自治体のがん検診でしょう。
自治体のがん検診には、肺がん、胃がん、大腸がん、子宮頸がん、乳がんの5つがあります。このうち放射線被曝のリスクがあるのは次の3つです。

・肺がん検診……胸部X線
・胃がん検診……胃X線
・乳がん検診……マンモグラフィー

「放射線」や「被曝」という単語は非常にインパクトがあり、ドキッとする方も多いでしょうが、もし、あなたが40代以上であればホッと胸をなで下ろしてください。

医療現場で用いられる放射線は身体へのダメージを最小限にするため、だいぶ控えめな設定になっているので、残りの人生でX線検査を数年ごとに1回受ける機会があったとしても深刻な健康被害につながることはないからです。

ただ、20代となると話は違ってきます。放射線は遺伝子を傷つけるということをご存じの方は多いでしょう。最新の研究では放射線を当てられると、わずか5分で細胞に傷ができるということがわかりました。

ただし、細胞は修復する力があるので時間とともに傷は治っていきます。その修復機能が落ちると傷ついた遺伝子ががんの原因となってしまうのです。

遺伝子が傷つき、そして修復されていく作業は分単位で起こっているので、年に1回のX線検査の影響がどれほどのことか、実際には判断が難しいところもあります。しかし、将来的になんらかの病気にかかってしまったら、X線検査やCT検査は必須。

1回1回の線量が少なかったとしても合計してかなりの量の放射線を浴びることは避けられません。そのときに備えて、それまでに浴びる放射線の量を抑えておくのは決して間違いではないのです。

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