テレビの視聴者参加番組「絶滅」何とも残念な選択 「99人の壁」「アタック25」レギュラー放送終了

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一方の「アタック25」も、放送46年ながらいまだに出場希望者は多く、予選会は大激戦。クイズアプリやQuizKnock(クイズノック)の人気で、若年層にもクイズブームが起きる中、日本全国に「出たいのになかなか出られない」「予選会で落ち続けている」「予選会すら参加させてもらえない」という人があふれています。

では、なぜレギュラー放送を終了させなければいけなかったのか。やはり視聴率という結果が出ないことが最大の理由であることは間違いありませんが、決してそれだけはないでしょう。これまで何度か各局の作り手たちに取材を重ねてきましたが、「視聴者参加のリスク」「手続きや確認事項など制作の手間」「エンタメ性の低さ」など、いくつかの理由があるようです。

コロナ禍によってCM収入が下がり、制作費はさらに低下。よりスポンサーが求める視聴者層に向けた番組を作らなければいけなくなったことで、「99人の壁」のようにコンセプトが素晴らしくても、「アタック25」のように根強いファン層がいても、終了させざるをえない番組が増えているのです。

一般人では撮れ高や笑いが足りない

もともと視聴者参加番組には、参加者への手厚いフォローが必要。確認や配慮、誘導や緊急対応など、収録前後におけるスタッフの労力は大きく、「当日来なかった」「後日、『やっぱり映さないでほしい』と言われた」などのケースも少なくありません。その手間は増えているうえに、出演同意書を書いてもらったところで、それを押し通せるわけでもなく、「芸能人であれば何も起きないところでトラブルが発生してしまう」というケースをよく聞きます。

さらに個人情報保護や、放送前の情報漏洩などの問題もありますし、テレビは少しでも問題が起きると責められる風潮も含めて、「そんなにリスクがあるのならやめておいたほうがいい」という流れになりがちなのです。

ただ1つ、テレビの制作サイドが勘違いしているのは、「視聴者参加番組はエンタメ性が低くなる」という考え方。通常、スタッフたちは視聴率を分刻みで確認しているため、「いかに多くの笑いや見どころを絶え間なく入れていくか」を考えて番組制作しています。

その際、一般人ではトークやリアクションが物足りず、さまざまな編集技術を駆使しても「撮れ高が少ない」「笑いの手数が足りない」という状態に陥るケースが少なくありません。スタッフたちの頭に、「この程度の密度ではチャンネルを変えられてしまう」「番組途中から視聴率が下がると自分の評価が下がってしまう」などの不安があるため、撮れ高や笑いの手数で計算が立ちやすい芸能人の番組ばかりになりがちなのです。

次ページだが、「リアリティがある」
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