熱狂からの怒涛の再編「ネットメディア」の黄昏 「バズフィード」上場計画の裏に苦しい経営事情

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ヴォックス・メディアは雑誌ニューヨーク・マガジンとその関連サイトを持つニューヨーク・メディアを買収。ヴァイス・メディアもリファイナリー29(Refinery29)を買った。ザ・ドードー(The Dodo)やスリリスト(Thrillist)などを展開するグループ・ナインは、ポップシュガー(PopSugar)を新たに媒体ラインナップに加え、さらに株式公開を目的とした特別目的買収会社(SPAC)を設立。

ハフポスト(HuffPost)を手に入れたバズフィードは、SPACを用いた自社の株式公開計画の一環として、別のメディア企業コンプレックス(Complex)を買収する方針を明らかにしている(「ブランク・チェック・カンパニー=白紙小切手会社」とも呼ばれるSPACは「空箱」のペーパーカンパニー。上場したSPACに事業会社を買収させることで、煩わしい審査を回避しながら株式公開するスキームだ)。

ウェブメディアの再編は、これにとどまらない。

未公開株投資会社大手TPGに対する巨額の支払い義務に苦しんできたヴァイス・メディアは、3人の消息筋によると、上場計画を詰めているところだという。ヴォックス・メディアもSPACを通じた株式公開についていくつかの提案を検討中だと、2人の事情通が語る。

ワシントンを拠点に2017年に設立された新興ニュースサイトのアクシオス(Axios)は、ドイツのメディア大手アクセル・シュプリンガーと合併の可能性について話し合ったと、交渉を知る3人が話した。内部事情を語るにあたり、8人の全員が匿名を条件とした。

大手とニッチ以外は泥沼

ウェブメディアが巻き返しに躍起となっているのは、無料コンテンツで広告収入を稼ぐビジネスモデルに対する投資家の熱が冷めてきたからにほかならない。今、波に乗っているのは、サブスタック(Substack)という有料ニュースレター(メルマガ)のプラットフォームだ。

バニティ・フェアの元編集者が少し前に立ち上げた有料のニュースレター、パック(Puck)もスタートに当たって数百万ドルの資金を集めた。ジ・インフォメーション(The Information)やインサイダー(Insider)など、厳格なペイウォールでコンテンツをがっちりと有料化しているニュースサイトも伸びている。

つまり、メディア業界は二極分化し、両端が大きく、まん中が細いバーベルのような形に変わったといえる。一方の極を形成するのは、ワシントン・ポスト(購読者数は紙と電子版を合わせて320万)、ウォール・ストリート・ジャーナル(同340万)、ニューヨーク・タイムズ(同600万)といった大手の報道機関。

名声、カバー領域の広さ、経験で購読者を引きつけている。

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