米国人記者が見た「特攻」と裏にある愛国の危うさ なぜ無駄死にすることが美徳となったのか

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

特攻を英訳するには、自殺を意味する「suicide」を含めた「suicide attack corps」(自殺による攻撃部隊)という訳もあるが、アメリカで一般に使われているのは「kamikaze」である。

kamikazeのように、自分たちが負けるのが明らかになっても、死ぬまで戦う日本兵を見たアメリカ人たちの間では、「日本は狂信的な愛国心を持つ国である」というイメージが定着した。自ら降伏しない以上、戦争を止めるために原爆を落とすしかないという、原爆を正当化する理由としても利用された。

疑問に対して私が得た結論から先に書けば、大和魂という、いびつな愛国のもとで、前途ある若い命が軽んじられたということだろう。権力を握っていた当時の軍上層部にとっては、兵士たちは自分たちが自由に使っていい資源のような存在に映った。だからこそ無駄死にすることが美徳とされ、やがては強制されていった。

最新鋭の戦闘機だけではなく、B-29爆撃機やレーダー、最後には原子爆弾まで開発してきたアメリカ軍に対して、日本軍は精神力で戦おうとした。そして、若くて訓練の足りないパイロットの愛国心を最大限に利用する特攻作戦を始めた。

日本軍の本当の強みは優秀なパイロットだった

零戦を巡る当時の状況について、少し補足しておきたい。太平洋戦争が始まったころ、零戦は世界最強の戦闘機だったといっても過言ではない。しかし日本軍の本当の強みは、零戦のコックピットに座る優秀なパイロットたちであった。

戦争が始まったころ、アメリカ軍は、自軍の戦闘機が零戦より性能が低くて、自軍のパイロットたちも経験がまだ足りないとわかっていた。アメリカ軍はパイロットに「遭遇した際には回避行動を認める」と緊急通達も出している。自軍の戦闘機は、零戦や原田さんなどの零戦のパイロットに太刀打ちできないことを知ったからである。

しかし、その後が命運を分けた。零戦による戦果にあぐらをかいていた日本軍の一方で、アメリカ軍は新しい戦闘機の開発に力を入れ、性能の高い戦闘機を次々と開発した。

ガダルカナル島で駐機していた海兵隊の戦闘機パイロットは、日本軍の飛行機が近づくとスクランブル(緊急発進)して、敵機が来る前に高い高度まで飛んで、零戦を待ち伏せした。日本軍の飛行機がガダルカナル島の上空に着くや、急降下して、攻撃したのだ。

2時間も飛んでいた零戦のパイロットは、燃料はギリギリで、体も疲れている。上手く反応できず、苦戦に陥った。優秀なパイロットが次々に撃ち落とされた。

真珠湾攻撃で世界を驚かせた日本軍のパイロットたちが、ガダルカナル島の上空で多く亡くなった。「日本軍は最大の強みをこうして無駄にした」と原田さんは語っていた。

次ページアメリカ軍はさらに強い戦闘機を開発した
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事