署名・押印だけでも膨大「天皇の仕事」激務な中身 憲法に規定されている「国事行為」だけじゃない
天皇のお務めは3つに分類される
ふだん私たちは天皇のお務めをじっくり考えることはありません。天皇、皇后両陛下が外国の賓客に晩餐会を催された、両陛下が地方を視察された、音楽会のチャリティーにご臨席された……。こうした話題も、よほど関心のある人でないと、その意味を深く考えることはありません。
近年、天皇のお仕事についてあらためて人々が考えるきっかけとなったのは、2016年8月、明仁天皇(現・上皇陛下)がテレビのビデオメッセージを通じて生前退位のご意向を示唆したときでした。平成になって明仁天皇がいかに数多くの「お務め」を果たしてきたかがあらためて明らかにされました。
天皇のお務めは、憲法に規定された「国事行為」、憲法にも法律にも規定のない「公的行為」、「その他の行為」に分類されるというのが一般的な考えです。このうち国事行為は、憲法第6条、第7条、第4条2項に具体的に定められています。
・国会の指名に基づいて、内閣総理大臣を任命すること
・内閣の指名に基づいて、最高裁判所長官を任命すること
・憲法改正、法律、政令及び条約を公布すること
・国会を召集すること
・衆議院を解散すること
・国会議員の総選挙の施行を公示すること
・国務大臣及び法律の定めるその他の官吏の任免並びに全権委任状及び大使及び公使の信任状を認証すること
・大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を認証すること
・栄典を授与すること
・批准書及び法律の定めるその他の外交文書を認証すること
・外国の大使及び公使を接受すること
・儀式を行うこと
・国事行為を臨時代行に委任すること
これらの国事行為は、天皇が国家機関として、内閣の助言と承認に基づいて行うとされています(憲法第3条)。
「助言と承認」の意味は「内閣が実質的に決定すること…そして天皇はそれに形式的名目的に参加される」(1988年10月の参議院内閣委員会で当時の内閣法制局長官)と解釈されています。
では、天皇はその行為に対して拒否権をもつのでしょうか。
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