署名・押印だけでも膨大「天皇の仕事」激務な中身

憲法に規定されている「国事行為」だけじゃない

宮中三殿は賢所(かしこどころ)・皇霊殿(こうれいでん)・神殿(しんでん)の総称です。賢所は皇祖天照大神がまつられています。皇霊殿には歴代天皇・皇族の御霊がまつられており、崩御(ほうぎょ・天皇が逝去されること)・薨去(こうきょ・皇族が亡くなられること)の1年後に合祀(ごうし)されます。また神殿には国中の神々がまつられています。

天皇は祭祀を大切に受け継がれ、国家と国民の安寧と繁栄を祈られます。年間約30件の祭祀が行われています。収穫豊穣を祈願する「祈年祭」(2月17日)、春分の日に行われるご先祖祭の「春季皇霊祭」(春分の日)、賢所に新穀を供える神恩感謝の「神嘗祭(かんなめさい)」(10月17日)などがあります。

宮中祭祀のなかで最も重要なものが11月に行われる「新嘗祭(にいなめさい)」(11月23日)です。新穀を皇祖はじめ神々にお供えし、神恩を感謝された後、天皇もお召し上がりになる祭りです。天皇自ら栽培された新穀もお供えします。

宮中祭祀は政教分離の観点から、天皇家のプライベートなお金である内廷費から支出されています。新嘗祭ももちろんそうです。しかし天皇が即位した年に行われる新嘗祭は一世一度の祭祀として「大嘗祭(だいじょうさい)」と称され、これだけは私的なものながら公的性格も有するとして宮廷費で賄われています。

象徴天皇のあるべき姿に関する2つの論

天皇のお務めを国事行為、公的行為、その他の行為(私的行為)で見てきましたが、象徴天皇はどうあるべきかという議論はこのお務め、とくに公的行為と密接に絡んでいます。

象徴天皇のあるべき姿について、大きく存在論と機能論が対立しています。存在論とは天皇は存在しているだけで十分で、国家と国民のために祈り、祭祀を執り行っていただければいいとする意見です。これは保守派、右派を中心に根強くあります。

右派からすると、天皇が公的行為をすればするほど、本来持つ宗教的権威が失われてしまう。天皇が国民に寄り添うということは「国民並み」になってしまうことだと主張します。

一方、機能論の立場は、天皇の行動に焦点を当てます。「象徴」として国民の信頼を得るためには、国民の苦しみ、悲しみ、喜びに共感し、寄り添っていることを行動で示す必要があるというのです。

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