陸自の個人装備が心もとなさすぎて不安になる訳 生存性の低さだけでなく疲弊も招いてしまう

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防弾ベストも設計が古い。現在の最新型の3型でも先進国レベルに達していない。2型だとポーチなどを装着するためのMOLLEシステムの規格も世界中で普及しているアメリカ軍の規格ではなく、陸自独自の規格を採用している。他国のものを採用できないようにするための「非関税障壁」なのだろう。

またボディアーマーに挿入される防弾プレートも日本独自の形状でありNATOなどが採用している規格ではない。これまた外国製を排除するための「非関税障壁」なのか。このため海外製品と比較されることもないので、ここでも競争原理が働かない。

体を守る装備の導入が不十分

そして諸外国では先進国のみならず、途上国ですら導入が進んでいる、体の重要な部分を防弾プレートで保護するプレート・キャリアに至ってはいまだに採用すらされていない。いままでのボディアーマーは砲弾の破片などから、身を守るソフトアーマーに加えて、小銃弾の直撃から身を守るプレートを組み合わせたシステムだ。だがこれだと重すぎ、機動的に動けないし、疲労も蓄積する。特に夏場は体温が籠もって熱中症になる危険性も高まる。

防弾ベスト2型を着用した普通科隊員(写真:陸上自衛隊)

このため諸外国の軍隊では、プレート・キャリアを採用している。プレート・キャリアは一般に側面には脱着式の追加プレートが装着できる。これは車輌に乗っているときなどの銃撃などに備えるためのものだ。陸自のボディアーマーにはこの種のサイドプレートが装備されていないので、側面から銃撃されるとほぼ無防備となる。

プレート・キャリアと組み合わせる通気性の高いコンバットシャツも導入されていない。これは腕や襟は迷彩のカモフラージュの難燃性繊維などで、胴体部分は吸湿速乾性繊維を使用している。これらは高温多湿のわが国に必要不可欠で本来他国に先駆けて採用が求められるはずだった。

難燃性の下着も支給されていない。隊員の中は、市販の高機能素材の下着を着ているケースがあるようだが、これらは熱で融解するので戦闘時にやけどを負ったときに、溶けて肌に張り付く恐れがあり、やけどによる被害をより大きくしかねない。対して軍用の難燃性下着は燃えると炭化してぼろぼろになるのでそのような被害が生じにくい。

膝や肘を保護するパットも一部を除いて導入されていない。しかもそれも質が高くない。陸自は戦闘時における隊員の安全に関しては関心が低いようだ。

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