陸自の個人装備が心もとなさすぎて不安になる訳 生存性の低さだけでなく疲弊も招いてしまう

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個人衛生キットもかつては包帯、止血帯各1個だけだった(PKO用はポーチ込みで8アイテム)。この点について筆者は過去に東洋経済オンラインの記事で指摘したことがある。その後、野党が動いて見直されて、補正予算が組まれるなどして、大幅に改善された。

だが十分とは言えない。例えば止血帯は2個に増えたが止血帯用ポーチすらいまだに支給されていない。止血帯を衛生キットのポーチに入れていると、使うとき、特に手を負傷したときなどはパニックを起こして取り出すことが難しい。うまく取れずに出血多量で死んでしまう。アフガンあたりではこれが多かった。その点警察のほうが実戦を意識しているので採用が進んでいる。

諸外国ではいわゆる先進歩兵システムの導入が進んでいる。一方、防衛装備庁でこの点について研究はされたようだが、導入には至っていない。

筆者の個人的意見として先進歩兵システムの導入については、重量やネットワーク関連の複雑さから先進歩兵システムの導入には懐疑的だ。ただ、せめて個人用無線機は配備できないのかと思う。

ターゲットロケーターの配備も不十分

これに関連するものでターゲットロケーターも、例外は特殊部隊や水陸機動団の特科大隊以外は配備されていない。ターゲットロケーターは双眼鏡に暗視装置、ジャイロコンパス、ビデオ、レーザー測距儀などを組み込んだもので、先進歩兵システムには小隊長や分隊長に支給され、ネットワークに接続される。この程度の装備は必要だろう。

暗視装置などが組み込まれたターゲットロケーターを使用するイスラエル軍兵士(奥)と、PADでデータを送信する兵士(手前)。自衛隊にはまだ導入されていない(写真:エルビット社)

このように普通科の個人装備は時代遅れであり、生存性が低いと言わざるをえない。のみなず、疲労を招いて戦闘力さえも削いでいる。これを異常だと思わない陸幕や装備庁の認識に疑問を呈したい。戦車・火砲の数を絞っても、より優先順位の高い普通科装備の近代化を進めることが望ましい。今のままだと兵隊は使い捨てと思っていると批判されても仕方あるまい。

清谷 信一 軍事ジャーナリスト

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きよたに しんいち / Shinichi Kiyotani

1962年生まれ、東海大学工学部卒。ジャーナリスト、作家。2003年から2008年まで英国の軍事専門誌『ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー』日本特派員を務める。香港を拠点とするカナダの民間軍事研究機関Kanwa Information Center上級アドバイザー、日本ペンクラブ会員。東京防衛航空宇宙時評(Tokyo Defence & Aerospace Review)発行人。『防衛破綻ー「ガラパゴス化」する自衛隊装備』『専守防衛-日本を支配する幻想』(以上、単著)、『軍事を知らずして平和を語るな』(石破茂氏との共著)など、著書多数。

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