ヤマハの名機「SR400」に熱狂的な人気が集まる訳 発売43年の最終型は新車価格2倍超のプレミアも

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(写真:ヤマハ発動機)

最高出力18kW(24馬力)、最大トルク28Nmにすぎないエンジンは、スタートがキック式というのがちょっと面倒ではある。しかし、レッドゾーン近くまで回せば単気筒なりに振動が目立つものの、ゆっくり走らせれば静かだし、実用に十分なトルクもある。乗り心地も外観からイメージするとおり、全体には優しいが、だらしなくふわふわする感触とは無縁だ。

SRの将来

SR400のブームは昨年に始まっており、二輪車新聞の調べによると2020年には400ccクラスで販売台数2位になった。それでも生産終了になるのは、2021年10月以降生産(継続生産モデルの場合)の新車に課せられるABS(アンチロック・ブレーキ・システム)装着義務化と、今後予定される排ガス規制強化のためだ。

現在のSRをベースに新規制へ対応することは容易ではなく、ヤマハとしても断念という結論なのだろうが、このコンパクトで、ちょっとクラシカルでおしゃれなネイキッドスポーツというジャンル自体は、今後も一定の市場規模があるはず。ホンダGB350のように新しい空冷350ccエンジンを仕立ててくるのか、何らかの方法でSRが市場に帰ってくることには期待が持てるのではないか。

そのときにはぜひ、楽器屋とルーツを同じくするヤマハらしさ、すなわち各部の上品なデザインや塗装、メッキパーツの質感、メインフレームの溶接にみられる精細さといった、品質的な個性を大事にしてほしい。価格が多少高くなってもユーザーが黙認することは、すでに今回のフィーバーにより証明されている。

田中 誠司 PRストラテジスト、ポーリクロム代表取締役、PARCFERME編集長

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たなか せいじ / Seiji Tanaka

自動車雑誌『カーグラフィック』編集長、BMW Japan広報部長、UNIQLOグローバルPRマネジャー等を歴任。1975年生まれ。筑波大学基礎工学類卒業。近著に「奥山清行 デザイン全史」(新潮社)。モノ文化を伝えるマルチメディア「PARCFERME」編集長を務める。

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