仏グルノーブル、入院患者数30%減の理由 在宅医療システム導入で、すべてが変わった

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新しいテクノロジーに基づいたITのプラットフォームは、通院している人だけでなく、まだ病気にはかかっていない高齢者にも同時にソリューションを提供するものです。高齢化に対処するための処方箋を日仏両国で共有すること。それが現実的な対応といえるでしょう。

現状ではIT技術を活用した在宅医療のソリューションに対するニーズはさほど膨らんではいない。医療に携わる側も、たとえば、タブレット端末を携帯している医師はそう多くありません。だからこそ、将来をイメージしておく必要があるのです。日本企業と今後、連携するためには、こちらの考えについてどう思っているのかあらかじめ聞いておきたい。

なぜ日本では在宅医療が普及しにくいのか

――日本ではまだ、在宅医療がそれほど進んでいません。

日本では多くの人が病院へ足を運んでいますよね。やや多すぎる。80パーセントの人が病院で亡くなっています。それでは、医療費もなかなか減らないでしょう。

家で充実した生活を続けてもらうための仕組みが在宅医療。その普及で求められているのは、バラバラではなく組織化された対応です。病院は今後、急性期医療が中心になるでしょう。全体としてみれば、急性期医療の必要な患者の比率は低く、その分、医療費は高い。一方、慢性の疾患にかかった患者への対応は、病院とまったく同じではないはずです。

病院では先端医療が施される。病院は常に存在し続けるでしょう。より専門的な医療が求められている。それは当然です。だが、それは社会のあらゆるニーズに応えるものではありません。病院は慢性期医療に携わるべきではない。

在宅での慢性期医療の普及を後押しするのは新しいテクノロジー。テレメディシン(遠隔医療)などの新たなテクノロジーに基づくシステムは、無駄な入院を減らす一助となるものです。病院は急性期医療に専念し、慢性疾患には在宅医療で対応する。そうした“文化的な変革”を推し進めるためには、現在の組織を見直さなければなりません。その際、情報、デジタル分野の手段は在宅で多くの人々の面倒をみる手助けになるでしょう。

――フランスでは在宅医療向けの新しいシステムの導入が、実際に入院患者減などにつながっているのでしょうか。

テレメディシンを取り入れたことで、重い心臓疾患にかかった患者の入院回数が年間で30%減ったという調査結果があります。そうしたシステムは病気の予防や変化の予見などにも役立つ。たとえば、心臓疾患の患者の場合、まずは家に設備を取り付けて週2回、体重を測定することから始めます。体重の変化を把握しておくのが予防や予見の第一歩です。

患者の家から送られてきたデータで“アラート”が発せられていれば、医師はまず、家に電話をして患者の容体を聞きます。そして、直接の診断や治療が必要となれば、患者は病院へ行く。ここが重要なのです。すぐに病院へ足を運ぶわけではありません。

ただ、肝心なのはテレメディシンなどの新しいテクノロジーを提供すれば、それで十分というわけではないということ。在宅であれば、食べることもできなくてはならないし、お手洗いへ行くこともできなければならない。つまり、医療だけでなく、介護や社会扶助といった側面からも対処する必要があるのです。

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