仏グルノーブル、入院患者数30%減の理由 在宅医療システム導入で、すべてが変わった

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もっとも、テクノロジーはあくまでも1つの過程にすぎません。つきつめれば組織的にどう対応するか、ということにたどりつく。“文化的な変革”を起こすためにテクノロジーをどう活用するのか。そして、医師、看護師、薬剤師などをどのように組織化していくのか。「高齢者に寄り添う」という観点に立って、将来をイメージするべきでしょう。

風光明媚な都市、グルノーブルは1968年の冬季五輪の舞台にもなった

――フランスには“独立看護師”という制度があると聞きました。

独立看護師が在宅医療の普及に貢献しているのは事実です。医師の多くも独立しています。ただ、それは“組織化”という点からいうと、難しい面があります。独立した医師が増えると、テレメディシンで情報を共有することが困難になる。互いのコミュニケーションも容易ではない。

企業であればトップが決断し、皆がそれに従う。ところが、独立している人が多いと、そうはいきませんよね。“変革”が簡単には進まないというデメリットもあるのです。

――今回の来日では、日本の株式市場で話題の企業、サイバーダイン(CYBERDYNE)も訪問したそうですね。

大きなポテンシャルのある企業だと感じました。その一方で、目標をもう少しはっきりとさせたほうがいいようにも思います。誰のために、どのようなタイプの高齢者のためにソリューションを提供するのか、絞り込んだほうがいい。

高齢者を対象にしたビジネスは、その対象や狙いをより具現化する必要があると考えています。ターゲットにしている高齢者のプロフィール、サービスのクライテリア、何のためにサービスを提供するのか、などといったことを明確にするべきでしょう。

(聞き手:松崎泰弘=東洋経済オンライン)

松崎 泰弘 大正大学 教授

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まつざき やすひろ / Yasuhiro Matsuzaki

フリージャーナリスト。1962年、東京生まれ。日本短波放送(現ラジオNIKKEI)、北海道放送(HBC)を経て2000年、東洋経済新報社へ入社。東洋経済では編集局で金融マーケット、欧州経済(特にフランス)などの取材経験が長く、2013年10月からデジタルメディア局に異動し「会社四季報オンライン」担当。著書に『お金持ち入門』(共著、実業之日本社)。趣味はスポーツ。ラグビーには中学時代から20年にわたって没頭し、大学では体育会ラグビー部に在籍していた。2018年3月に退職し、同年4月より大正大学表現学部教授。

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