61歳科学者「人類初AIと融合」余りに壮大な生き方 難病ALSに見舞われた彼が挑むとてつもない賭け
まるっきりSFのような話だが、ピーター氏はそれを「SFじゃない」と断言する。ロボット工学の第一人者としての自信がそうさせるのだろうが、彼が自分の考えを信じ続けられることにはもうひとつ理由がある。
![](https://tk.ismcdn.jp/mwimgs/0/7/570/img_07954ca279b9666fbee92c45ea06ecb5778706.png)
上記の発言にもある「ダーリン」の存在がそれだ。彼はゲイであり、パートナーであるフランシス氏と多くのものを共有することによって自我を確立してきたのである。その関係性は男女のそれとまったく変わりがなく、もしかしたらそれ以上に純粋だとすら言えるかもしれない。
なお余談ながら、本書を際立たせている特徴のひとつが、ピーター氏とフランシス氏、それぞれ異なる個性だ。そして、その違いを効果的に表現するために一役買っているのが“会話”である。原著を確認したわけではないが、翻訳が優れていることもあり、言葉の端々からそれぞれの性格を読み取ることができるのだ。
ピーター氏がインテリでプライドが高く行動力がある一方、フランシス氏にはやや斜に構えた屈折感があるというように。そんなふたりの関係性が、間接的にではあるが物語に深みを与えているのである。
そう、これは“物語”なのだ。
現在のピーター氏は?
たしかに基本的には、人類初のチャレンジを試みた学者の自伝である。だが同時に、若いころにふとしたきっかけで出会い、結果的には人生の伴侶となったフランシス氏との二人三脚を描いた物語でもあるのだ。
ピーター氏が“真に重要な宇宙の法則”として次の3つを挙げていることも、そうした考え方の根拠となるかもしれない。
2. 人類が偉大なのは、ルールをぶっ壊す存在だから。
3. 愛は――最終的に――すべてに勝つ。
(420ページより)
さて、とてつもない賭けに出たピーター氏は、最終的にどうなったのだろうか?
最終章は2040年の話になっており、つまり文字どおりSFとして幕を閉じる(そういう意味でも、多角的な作品だといえる)。だからわかりづらい部分はあるし、そもそも種明かしをするのはアンフェアだ。
しかし余命宣告から4年を経た2021年現在も、研究、著書出版、メディア出演などを精力的にこなしているそうだ。発想力、行動力、そして愛の力が、不可能を可能にしたということか。
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