61歳科学者「人類初AIと融合」余りに壮大な生き方

難病ALSに見舞われた彼が挑むとてつもない賭け

これから数年かけて、脳を除く僕の全身は少しずつ機能を失っていき、やがて呼吸ができなくなる。人工呼吸器の力を借りて生き延びても、やがて身動きができなくなる。自分の体に閉じ込められるというわけだ。
しかし、これは完全に誤った方向からの見方だと僕は思う。代わりに、僕の脳の視点から物事を眺めてほしい。肉体から解放された僕の頭脳は、これから壮大な旅に出ることになる――この僕自身(の自我の部分)を道連れに。(142〜143ページより)

たしかに“壮大”すぎるので、いまひとつわかりにくいかもしれない。だが、それは仕方がないことでもある。なぜならピーター氏が考えていることは、あまりにぶっ飛んでいるからだ。

自身を実験台として、AIと融合しようというのである。「サイボーグになる」という選択をしたのだ。

脳さえ活用できれば生きられる

「“元の僕”、あるいは<ピーター1.0>」の性質そのものが変化するということだ。“新しい僕”、つまり<ピーター2.0>とは、元の脳の大部分(基本的には動作を司っている部分なので、最終的には使い物にならなくなる)に、人工頭脳による拡張機能をたくさん追加したものだ。一方、僕の体そのものは、眼球を例外として、単に脳を動かすためだけに存在することになる。(185ページより)

・事前に録音した自分の声をもとに合成音声をつくり、AIに話をさせる。
・自分にそっくりなアバターに、表情を再現させる。
・会話の出だしをボイスシンセサイザーに任せておき、その間に言いたいことを目でタイプして文章を挿入していく。
・「チャーリー」と名づけた相棒の電動車椅子を、自在に走れるようにカスタマイズする。

たとえばこのように、残された脳のポテンシャルを引き出せるようなアイデアを形にしていこうということ。歩けなくても走れなくても、喋れなくても笑えなくても、食べられなくても排泄できなくても、唯一生きている脳さえ活用できれば、生き続ける手段はあるという発想だ。

「僕が言おうとしていたのはこういうことだ――将来的に、僕の一部はロボットになる。でも、それこそが本物の僕なんだ。機械の体(ハードウェア)と生身の体(ソフトウェア)が半々、デジタルとアナログが半々というわけさ。僕が僕でありつづけるためには、この方法しかありえない。おしゃべりしたり、冗談を言ったり、笑ったり、しかめっ面をしたりする。僕の人格はなんとか存続させたい。そのためには、僕は変わらなくちゃならないんだよ、ダーリン。(186ページより)
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