61歳科学者「人類初AIと融合」余りに壮大な生き方 難病ALSに見舞われた彼が挑むとてつもない賭け

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彼の生き方に勇気づけられる人も少なくないはずだ(写真: metamorworks/PIXTA)

NEO HUMAN ネオ・ヒューマン: 究極の自由を得る未来』(ピーター・スコット-モーガン著 藤田美菜子 訳、東洋経済新報社)の著者、ピーター・スコット-モーガン氏は、ロンドンの理工系名門大学として知られるインペリアル・カレッジにおいて、ロボット工学の博士号を取得した実績の持ち主。61歳の科学者だ。

その身に降りかかった予想外の出来事と、付随するさまざまなプロセスを綴った本書は、彼が旅の途中で右足に異変を感じるところからスタートする。風呂に入り、バスタブの湯の中に立って体を拭いているときのことだった。

右足が思うように動かない。水滴を振り払おうとしても、わずかにくねるだけ。せいぜい、のろのろ動くといった程度だ。ガラパゴス島の年老いた巨大ガメが足を揺すれば、きっとこんなふうに見えるだろう。(5ページより)

だがその時点では、足がつったか肉離れを起こしたのだろうと解釈した。事実、それから3カ月は何事もなかった。

ところが旅をしている最中、特定の歩き方や座り方をした際に、右足に震えを感じることに気づいた。理学療法士に足を診てもらったのは、そんな理由があるからだった。

「私が知らないということは…」

「それで、こうした症状は、一般的には何を意味するのですか?」
私はとっさに、話し方をよりプロフェッショナルな調子へと切り替えた。(中略)
「そうですね。クローヌスと呼ばれる現象だと考えられます」
その単語を耳にした覚えはなかった。私には、ぼんやりとではあるにせよ、大方の医療用語を記憶している自信がある。その私が知らないということは、かなり珍しい部類の病気に違いない。
図々しくもそう当たりをつけた私は、あれこれ考える前に、ずばり踏み込むことにした。「神経障害の一種でしょうか?」
「そのとおりです! 上位運動ニューロン障害の可能性が疑われます。すぐにかかりつけ医の方への手紙を用意しましょう。かかりつけ医から神経科医を紹介してもらって、MRI検査を受けてください」(6〜7ページより)

「右足に震えを感じる」という描写、そしてこのやりとり部分を確認した時点で、本書に対する関心はぐんと上がった。なぜなら私自身が、およそ1年前にあるきっかけで「クローヌス」という言葉を知ったからだ。

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