ジゲノミクス2つ目の「多領域・多地域展開」。同事業においては求人以外に不動産や自動車など7つの領域を展開し、エリアにおいてもインド、マレーシア、アメリカ、イギリスなどですでにサイト展開を始めている。
「先進国と途上国では戦略が異なります。先進国ではすでにメディアがたくさんあるので、日本同様にそれをアグリゲートしていく。途上国ではメディアがない領域もあります。たとえばベトナムでは子会社『ZIGExN Ventura』を立ち上げ航空券事業で参入し、すでに単月黒字化しています。中古車ディーラー事業はアフリカで展開しており、日本で売れない車をアフリカで売っています」
M&Aは借り入れや社債のデットファイナンスで模索
ジゲノミクス3つ目の「複数のビジネスモデルを持つこと」は既存事業に加えて社内で新規事業を立ち上げたり、買収で多角化していくことを指している。時価総額1兆円構想のカギを握るであろうM&A戦略について伺った。
「誤解していただきたくないのは、M&A至上主義ではないということです。上場している以上、株主にリターンを出すのが至上命題。その手段として、既存事業を伸ばすというのもありますし、エクイティファイナンスで時価総額を上げていくというものもあります。既存事業とM&Aの両方でレバレッジをフルにかけていく必要があると思っています」
じげんの2014年3月末時点での貸借対照表を見ると現預金は20億円。2014年7月にはブレインラボを11.7億円で買収している。2013年12月に上場したばかりであり、キャッシュリッチな企業とは言い難い。買収資金はどのように工面するのか。
「まずは銀行借り入れ、その後は社債でしょうか。私は現在、資産管理会社も含めてじげん株式の約70%を保有しています。株式交換での買収などは最後と考えています。ファイナンスに関してはMBOした際に苦労したので、かなり勉強しました(笑)。社債での公募は市場に対してネガティブなものはやるつもりはありません」
M&Aでビジネスモデルの多角化を狙うが、選定基準としては「すでに利益が出ており、自社で立ち上げるよりも割安で、時間が買えるか」という観点が大きいであろう。約5000万円で取得し、子会社化後に社名を変えた「よじげん証券」のような例は、証券会社が乱立したため新規で証券会社を立ち上げる敷居が高くなってしまったため、時間を買った買収戦略といえる。
今回、平尾氏に話を伺う中で「プラットフォーム」への強いこだわりが感じられた。特定事業領域の特定バリューチェーンで強みを出すことではなく、多領域展開しバリューチェーンは極力すべて自社で内包する。
ジゲノミクス2つ目の「多領域・多地域展開」は決算説明資料を見ると英語で「Not Category Killer」と記載されている。現在は転職EXなど求人領域の売上構成比率が高いと思われるが、上場時も「人材系企業と見なされないよう気を遣った」と平尾氏が言うように、事業拡張性を意識してきた。平尾氏曰く、カテゴリーキラーとして強い企業はM&Aされる側。じげんはM&Aを仕掛けてカテゴリーキラーを吸収していくプラットフォーム企業でありたいという。
じげんの「時価総額1兆円構想」。2014年8月時点では時価総額600億円前後だが、平尾氏の緻密な戦略で既存事業とM&Aの両方でフルにレバレッジをかけていくことができれば、本当に達成可能かもしれないと思わせるインタビューであった。平尾丈氏はソフトバンク孫正義氏を超える経営者となれるのか。株式市場を中心に今後も熱い視線が送られていくだろう。
(撮影:大澤 誠)
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