「理想的な常連客」一般人の常識裏切る3つの実態 「口コミ」から「未来のお客様」を呼ぶ必殺技

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あくまで私見ですが、私の伝えたいという想いと動作やジェスチャーで、「非言語の会話が成立している」から、リピート客になってくださっているという実感があります。

これは、私が接客を受ける立場になっても感じることです。

私が何度もリピートしているカレーの店には、外国人の店員さんがいます。その人は、お世辞にも日本語が上手とは言えません。私の英語レベルです。ですが、気配りが素晴らしいのです。

そこは食事する各テーブルに水ポットがあり、おかわりは自分で注ぐスタイルです。ある時、私が食事を進めるにつれて水がなくなり、氷だけは満タンに入っている状態になりました。氷が入っているので、水がなくなったことは、よく見ていなければわかりません。それにもかかわらず、水がなくなったことに遠目から気づいてくれて、たっぷりの水が入った水ポットを持ってきてくれました。

このような気づかいからは、「自分ができるサービスをお客様にしたい」という心が伝わります。そんな気配りをされると、言葉が少しわからないことなんて、大したことではないように思えてきます。一生懸命さというのは、言葉でなくても通じるのです。

特に観光で来ている外国人のお客様にとっては、日本の旅の思い出として残ります。数々の場所がある中で、自分が関わる場所に来てくれたのは運命。楽しかった思い出の1つとして記憶してもらえれば、一度来た場所だけに安心して再訪できる場所ともなるのです。たとえ言葉が通じなくても、リピートするお客様というのはつくれるのです。

「口コミ」が確実な集客になる理由

そして集客をする際、お客様を確実に増やす方法の1つが「口コミ」です。逆に口コミが悪ければ、自分たちが気づかないうちに未来のお客様が減ることにつながりかねません。それは今、来ているお客様の意見がその口コミに含まれているからです。

人は、誰かがいいと言ったものを信用して欲しがります。レビューで高評価のついている商品がよく売れるのはそれが理由です。口コミも同じでお客様の評価が詰まっているのです。

最後に1つだけ持論ですが、この口コミを広めてもらうために私がやっている仕掛けをご紹介しましょう。これはお客様とコミュニケーションができている時のみに使える、必殺技です。

『リピート率80% 心をつかむ接客術』(ぱる出版)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

常連のお客様と話をしているときに、家族やパートナー、職場の人の話が出ることがあると思います。それが一段落したときに言うのです。

「その方と今度一緒にいらしてください」

拍子抜けしたかもしれません。ですが、口コミや集客を考えたときには絶大な効果を発揮するセリフです。1人で何度も来ているお客様は「誰かと一緒に来る」という発想を思いつかないものです。そして、たとえここは自分の秘密基地だと思っているお客様でも心の奥底で自慢したい・伝えたいという欲望を持っているものです。

その常連様から誘いを受けた未来のお客様は「どんなところなんだろう」と少し緊張しながらも、前情報のおかげでワクワクしながら来てくれるはずです。お客様の話に出た人と一緒に来ることを想像させ、実際に連れてきてもらう。未来のお客様を常連様に連れてきてもらうのです。

仲亀 彩 外資系一流ホテル 鉄板焼士

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なかがめ あや / Aya Nakagame

1984年、山梨県生まれ。祖父母が農家。15歳から飲食店で接客業をはじめ、関東学院卒業後、独学で調理の道に。都内の数店舗で修業をし、20代で現職である外資系の一流ホテルの高級鉄板焼でカウンターシェフに抜擢。また個人で世界各地の鉄板焼を学ぶ。小学校への食育やNPO団体へのボランティア、孤児へのチャリティーなどをしながら、貧困や家庭環境にかかわらず、子どもたちに安全で満足な栄養が与えられるような仕組みをつくろうと活動をしている。

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