テスラの「欧州進出」を全力で拒むドイツの勢力 シリコンバレー流の高速経営を阻む欧州の伏兵

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ドイツ・ベルリン東部に建設中のテスラの工場(写真:Andreas Meichsner/The New York Times)

ベルリン東部の松林に囲まれた地域で建設が進む薄灰色の巨大工場。アウトバーンに専用の出口を持つ同工場では、今ごろピカピカのテスラ車の生産が始まっているはずだった。ところが、シリコンバレーの野心はここでドイツの流儀と衝突した。

総工費70億ドルの同工場は急成長するヨーロッパの電気自動車(EV)市場に対する供給拠点となる予定だが、地元当局によると計画には少なくとも半年の遅れが生じている。併設のEVバッテリー工場は建設が始まったばかりであり、テスラ車のドイツ生産はさらに遅れる可能性もある。テスラは取材にコメントしなかった。

ヨーロッパにおけるテスラ初の大規模完成車工場は、地元政治家の強い支持を得ている。しかし、環境保護団体からの法的措置、当局による承認手続きの遅れ、テスラ自らの計画変更が進捗の妨げとなっている。おまけにテスラは、工場用地に生息するトカゲ、さらにはこのトカゲを食べて生きているヘビの住処も用意しなくてはならない。

ヨーロッパ市場は外国メーカーの鬼門

テスラにとって生産の遅れは大きな痛手となりかねない。フォルクスワーゲン(VW)、メルセデス・ベンツ、ルノーといったライバルにEVのラインナップを増やす時間的余裕を与えてしまうからだ。

テスラが中国とアメリカから輸入している「モデル3」は、ヨーロッパ大陸で最も売れているEVだ。しかし、ベルリンを拠点にヨーロッパのEV販売を追跡している独立系アナリストのマティアス・シュミット氏によると、ハッチバックの「ID.3」やSUV(多目的スポーツ車)の「ID.4」を昨年投入したVWは、EVの合計販売台数でテスラを上回るようになっている。

シュミット氏が言う。「ヨーロッパ市場は今、とても盛り上がっている。テスラがチャンスを逃し、ヨーロッパメーカーに好機がめぐってきているのは間違いない」。

歴史的に、アメリカの自動車メーカーが大西洋を飛び越え、ヨーロッパ市場をドル箱にできたケースほとんどない。労働組合の扱いの煩わしさに加え、現地消費者の嗜好を読み取る難しさから、ヨーロッパ市場は外国の自動車メーカーにとって金食い虫となってきた。

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