何で私が?突然ビリチームを任された男の心の中 米海軍で屈指の潜水艦艦長が見せた圧巻の決意
ケニー代将はさらに、突然の艦長交代のせいで、スケジュールにはいっさい余裕はないと付け加えた。
海軍と国家は、「完全な状態のサンタフェ」を必要としていた。すなわち、期限内に、完璧に機能できる潜水艦に仕上げろということだ。配備可能な状態になっているかどうかの最終判断は、ケニー代将が下す。
彼は最後に励ましの言葉をかけてくれた。
「君ならできると心から信じている。一つだけアドバイスしよう。懐中電灯はいいものを持っていけ」
私はケニー代将と握手を交わし、部屋を出た。私たちは、というか私は、どうやってこの任務を遂行するのだろう? 実現できるかどうかも不安だった。その任務の大変さに圧倒され、どこから始めていいのかもわからなかった。配備に向けた準備だけでも気が遠くなるのに、一緒に作業にあたるのが士気の低い乗員ときている。
これはチャンスだ!
だが思い返せば、ケニー代将は私にすばらしいリーダーシップを示してくれた。配備に向けて、あらゆる面で艦を完璧に整えるという具体的な目標は提示したが、そのやり方は指示しなかった。
それともう一つ、彼はこうも言ってくれた。艦にある人材と資源は以前と同じだが、それはほかのどの潜水艦も同じだ。だから自分たちで、自らの言動や乗員との関係性を変えるしかないのだ、と。私はその実現に専念することになるだろう。
自分が置かれている状況について改めて考えてみた。ケニー代将は細かく指図するつもりはないという。これは新しいことをやってみるチャンスかもしれない。「言われたことをやれ」というトップダウン方式のリーダーシップから乗員を解放するチャンスかもしれない。
たぶん、こんな機会はもうないだろう。もちろん、すべての責任は自分にある。もしそれで準備が間に合わなければ、それは私のせいであり、そうならないようにするのが私の仕事だ。
私はこのチャンスを活かすと心に決めた。自分が掲げる新しいリーダーシップを、この艦で試してみよう。ケニー代将の部屋を出ると、私は埠頭に係留中のサンタフェに向かって歩き始めた。
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