「愛のため」女性たちはタダ働きを強いられてきた 韓国で人気沸騰のキム・ジナさんが語る
国家は男の顔をして女たちを黙らせ、自分の影となって影法師の仕事をすることを要求する。結婚はそれを可能にする最も簡単で便利なやり方だ。
異性愛、母性愛、家族愛など、さまざまな愛の名を借りていかにもそれらしく装う。そんなふうに女性を家父長制の中に追いやって馬車馬のように働かせた結果が、2018年の世界最低出生率だ(0.97人、2018年第2四半期)。
すでに貧しい国ではない、1人当たりのGDPが3万3000ドルに上る国での史上最低出生率というのは何を物語っているのだろうか? その国家の経済発展が女性の搾取によってなされたこと、そして女性の人権はまったく改善されていないということだ。出産政策に関わる部署は過去13年の間に153兆ウォンを投入してもなおこの根本原因が理解できないらしいが、人口の半分を占める女たちはみんなよく知っている。女の労働を無報酬で搾取して叶えた開発と成長は、すでに過去のものなのだということを。
『森の生活』のソローだって、食事と洗濯は母親任せ
数日前、田舎に移住して隠居生活を送っているある大学の名誉教授が、インタビューで「ひとりぼっちの生活は怖くない!」と言っていた。記事中の、訪れた記者に「夫人お手製の飲み物をふるまった」というくだりで失笑が漏れた。ウォールデン湖のほとりに自らの手で小屋を建てて暮らしていたH・D・ソローが、実は食事と洗濯は母親にしてもらっていたというエピソードを知ったときと似た虚脱感だった。
最近私には新しい能力が身についている。ある男の人が博士号をもらったり作品を完成させたり受賞したりすると、その人がすごいと思う前に彼の周囲にいる女たちが見えてくるのだ。つい最近まで目に留まらなかった、幽霊みたいな存在だ。
ソローの母親のようなお母さんだろうか? 孤独死を夢見ると語る教授の夫人みたいな妻だろうか? あるいは恋人? 男が自分のことだけに夢中になっていられるよう献立を決め、買い出しに行き、料理を作り、洗いものをし、掃いたり拭いたり洗濯したり。一日中近くでしずかに動いていたその女は誰だろう?
家事労働のほかに秘書としての仕事をしていた女も多いだろう。いままで歴史に記録された数多くの業績と成功も、だからこそ可能だったんじゃないか?「見えざる手」の助けがあったから。
偉業を残した人だけの話ではないはずだ。
職場で私と競争する普通の既婚男性たち。結婚後こぎれいになった彼らにも、1つずつ割り当てられている魔法の手。正直、自分だってその「見えざる手」が欲しい。そんな気持ちを都会の男は「僕と結婚してくれる?」と表現するのである。1人の女性―母親の労働を無報酬で搾取するのはもうこれで十分だろう。
自分の手で稼いだお金を誰のことも気にせずに使えるという喜びに値段は付けられない。どんな照明よりもその人を輝かせてくれる。だから、女性の労働には必ずまっとうな賃金が与えられるべきなのだ。
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