「愛のため」女性たちはタダ働きを強いられてきた 韓国で人気沸騰のキム・ジナさんが語る

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女性たちが奪われずに生きていける社会をつくるには、どうしたらいいのでしょうか(写真:LeoPatrizi/iStock)
「ジェンダー・ギャップ指数2021」(世界経済フォーラム)は、今回も日本は主要7カ国(G7)のなかで最下位。日本だけではありません。隣国の韓国もほとんど変わらない順位。男性優位といっても過言でない社会で、女性たちは何をすれば奪われずに生きやすくなるのでしょうか。
そのヒントを、NYタイムスでも取り上げられたフェミニズム空間「ウルフソーシャルクラブ」を運営するキム・ジナ氏が語ります。韓国で話題沸騰の彼女のはじめての著書を邦訳した『私は自分のパイを求めるだけであって人類を救いにきたわけじゃない』から一部抜粋してお届けします。

経済発展を下支えしているのは、女性たちの無報酬労働

「どうしてそんなに仕事が大事なんですか?」

就活中か仕事を始めたばかりの女性からときどき訊かれることだ。仕事は私にとってとても大事だ。こう言うと並々ならぬ仕事欲とかワーカホリックと誤解される。が、違う。自分の名前を掲げてやっている仕事だから恥ずかしくない程度にするだけで、徹夜して芸術魂を燃やすなんてことはしない。にもかかわらず私にとって仕事が大事な理由は、質問した側がソワソワするくらいシンプルだ。

「家事が嫌いだから」

私は、家事をしないために外で働くほうを選んだ。ここでいう家事とは、妊娠、出産、育児と続く結婚という道を選んだときに避けて通れない課題、つまり家事労働やケア労働のことを指している。

家事が嫌で必死に外の仕事に没頭していた人間が、家事に似た労働、つまりカフェの仕事を続けられている理由は、なんといってもお金である。家事労働とは違って店の労働ではお金が稼げる。会社みたいにボーナスや年末のインセンティブもないけれど、それでも体を動かして稼いだ真っ正直なお金だ。

家事に似た労働でお金を稼ぐ時間が長ければ長いほど、実際の家事に投入する時間は短くなる。お金にならない仕事に自分の労働力を使いたくないのだ。最近は家でノンフライヤーのボタンを押すのがせいぜい。それだって私が非婚の女性だから可能なことだろう。

多くの食堂、病院、弁当会社、給食会社の厨房で働く既婚女性たちはそうはいかない。彼女たちには家でも休む暇がない。夫や子どもたちが口を開けて待っているから。仕事から帰るとまた別の労働が始まるだけのことだ。家の外でなら、たとえ最低賃金であっても受け取ることができるが、家の中では同じ仕事でも徹底して無報酬だ。韓国のめざましい経済発展を下支えしているのは、女性たちの無報酬労働だと思う。

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