納得!だからあの人は「部下がついてこない」のか 現場が自発的に動く「PDアプローチ」の反転質問

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全体の傾向から平均値を求め、一律的な判断を下しては、PDは見つかりません。PDとは統計学でいう外れ値のことです。それは平均値からは乖離しているからこそ外れ値というのです。

この外れ値であるPDを見出すためには、「~にもかかわらず、成功している人はいますか?」という反転質問がどうしても必要です。この反転質問をできるかどうかが、学習する組織に生まれ変わる鍵となるのです。

学習する組織を進化させるリーダー

ピーター・センゲの学習する組織は、因果関係が明確な技術的問題についてはうまく機能します。しかし、行動変容を伴う適応課題の場合、システム思考による因果関係の特定というアプローチにとどまるかぎり、学習は難しくなるでしょう。

組織で生じる個々の出来事の背後には、何らかのパターンがあり、そのパターンは組織の構造によって大きく規定されています。学習する組織では、この構造における因果関係を明らかにしようとします。

それに対してPDアプローチでは、この構造のさらに背後にあるメンタルモデルや隠された行動、すなわちPD行動に着目します。ここにダイレクトにアプローチすることにより、新たな成功のための因果関係を明らかにし、それによって組織変革を促していくのです。

PDアプローチは学習する組織と矛盾するものではありません。むしろ、それを補完するものです。適応課題の場合、悪者探しではなく、片隅の成功者であるPDを反転質問によって探し出し、それを組織内に普及させていくことで組織変革をボトムアップ的に実現していきます。これが学習する組織をさらに進化させていくことにつながるのです。

デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進、SDGsの目標達成など、ビジネスを取り巻く環境の急変に伴い、今後、ビジネスの適応課題は増えていきます。だからこそ、旧来型の有能なリーダーではなく、「PDを見出し、そこから学び、組織を変えることができる」リーダーが求められるのです。

原田 勉 神戸大学大学院経営学研究科教授

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はらだ つとむ / Tsutomu Harada

1967年京都府生まれ。スタンフォード大学Ph.D.(経済学博士号)、神戸大学博士(経営学)。神戸大学経営学部助教授、科学技術庁科学技術政策研究所客員研究官、INSEAD客員研究員、ハーバード大学フルブライト研究員を経て、2005年より現職。専攻は、経営戦略、イノベーション経済学、イノベーション・マネジメントなど。大学での研究・教育に加え、企業の研修プログラムの企画なども精力的に行っている。主な著書に、『OODA Management(ウーダ・マネジメント)』(東洋経済新報社)、『イノベーション戦略の論理』(中央公論新社)、『OODALOOP(ウーダ・ループ)』(翻訳、東洋経済新報社)などがある。

 

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