「お金より時間」優先の転職・就活が幸せを導く 給料中心で仕事を決めても幸せにはなれない

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私の調査では、時間を大切にする学生は、お金を重視する学生とは違うキャリアパスを選ぶこともわかった。時間を重視する学生は、大学院への進学率が高かった。それとは対照的に、お金を重視する学生は、フルタイムで働いたり、経営学の学位取得を目指したりする率が高かった。この調査では、何をすることを選んだかよりも、なぜそのキャリアを選んだかのほうが、幸福感に大きな影響を与えることがわかった。

これは、学生の親がどれだけ豊かかとは関係なかったので、時間重視の人々は、そうであるだけの余裕があるからにすぎないという考えは排除された。

ここで1つ注意しておかなければならないことがある。この調査が行われたのはカナダであり、そこではアメリカと比べて、学生が卒業するときに抱えている学資ローンの負債が少ない。借金が多く、若い従業者の重荷になっている国では、結果はそれほど明確ではないかもしれない。

だからといって、タイム・リッチな決定を下す意味がないということにはならない。むしろそれは、カナダ以外でも人々がお金よりも時間を優先させるキャリアの決定を下せると感じやすくするように、さまざまな組織や政府がやれることがもっとあるという証拠だろう。それができれば少なくとも2年後には、従業者は一般に、より幸せで、生産的で、勤務先に対して忠実であることがわかったのだから。

こうした調査の結果わかったことは、最初の仕事以外についての決定にさえも当てはまるのではないかと思う。私たちがお金に執着しやすいのは、キャリアの半ばに差しかかった頃で、ローンや子どもの養育費、学費などを、人生のこの段階であれこれ払わなければならなくなるからだ。

給料中心の決定が幸福感の増大につながるとはかぎらない

私たちは、キャリアが定まり、そこから抜け出せなくなっているように感じる可能性が高い。たとえば、簡単に都会に引っ越したり、給料の少ないフレックスタイムの仕事に替えたりすることができないだろうからだ。とはいえ少なくとも、お金中心の決定がいつも幸福感の増大にうまくつながるとはかぎらないことは承知しておいたほうがいい。

そして、通勤に片道2時間、往復4 時間かかるけれど、年に3 万6000 ドル(396万円)多く稼げるなどと自分に言い聞かせているときには、そのお金よりも自分の時間のほうがおそらく価値があることに気づくべきだ。

先ほど出てきたテッドは、ストレスの多い仕事を続けることを選んだ。2年後、収入は増えていたけれど、離婚し、独り暮らしをしていて、幸せとは言えなかった。仕事の選択に直面したときのように、人生における重大な時点に差しかかったときには、より多くの時間よりもより多くのお金を手に入れることを選んだら、一生にわたって失うかもしれない幸せについて考えることが大切だ。

(翻訳:柴田裕之)

アシュリー・ウィランズ ハーバード・ビジネススクール アシスタント・プロフェッサー

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Ashley Whillans

カナダのブリティッシュ・コロンビア大学で社会心理学の博士号を取得し、現在はハーバード・ビジネススクールのアシスタント・プロフェッサー。人々が時間とお金のトレードオフをどのようにこなすかや、それにかかわる決定が仕事の満足度や幸福感や心身の全般的な充足度にどのような影響を与えるかを、同大学院で研究している。これまで「行動科学の新星(Rising Star of Behavioral Science)」に2度選ばれ、数多くの学術誌に論文が掲載されてきた。『ニューヨーク・タイムズ』紙、『ワシントン・ポスト』紙、『エコノミスト』誌、CNN、BBCでも研究が特集されている。

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