「お金より時間」優先の転職・就活が幸せを導く 給料中心で仕事を決めても幸せにはなれない

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すると、時間を優先する学生のほうが、お金を優先する学生よりも2年後には幸せだった。調査を始めた時点で、彼らがどれだけ幸せだったかを考慮に入れたときでさえ、そうだった。お金よりも時間を大切にする学生のほうが幸せだったのはなぜか?

学生たちは卒業後、さまざまな理由でキャリアについての最初の決定を下した。就職するか大学院に進学するかに関係なく、時間を優先する学生は、自分が「しなければならない」ことではなく「やりたい」ことに取り組んでいると答える率が高かった。

そのうえ、時間を重視する人は、働く時間が少ないから、あるいは、収入が低いから、より強い幸福感を報告していたわけではない。時間を大切にするという人の多くが、毎週50時間から60時間働いており、金銭的にもうまくいっていると報告した。ところが彼らは、時間中心の活動を選び、時間を重視する視点を支持するようなキャリアの決定に的を絞ることで、有意義な仕事に就き、友人や家族や趣味のために時間のとれる、長期的な路線へと乗り出していたのだ。

この調査結果は重要だ。私たちのほとんどは、仕事を選ぶとき、簡単に測定できる基準である給料や評判を重視しすぎ、仕事に費やすことになる時間にどれだけ価値があるか、仕事のせいで働いていないときの時間がどのように束縛されるかには、あまり目を向けない。それは1つには、富が人生を良いものにする程度を過大評価しているからだ。

給料よりもフレックスタイムや通勤時間の短さ

富についての間違った考えは、諸手当などにまで及ぶ。従業者は、給料に加えて、保険や、退職金などの現金給付によって、自分の仕事の満足度が根本的に決まると思っている。ところが彼らは、お金の価値を過大評価しているのだ。

それと同時に、フレックスタイムや短い通勤時間といった、タイム・リッチな特徴の価値を過小評価する。私たちが分析すると、社会経験や有給休暇などの金銭ではない恩恵は、給与や手当などの金額の多さよりも仕事の満足度に大きな影響があることがわかった。他の条件がすべて同じなら、育児休暇やフレックスタイム、病気休暇といった時間中心の恩恵は、年収 4 万8000ドル(1ドル110円換算で528万円)の人にとっては、 3万8000ドル(418万円)多くもらう以上に、仕事の満足度を高めた。考えてほしい。さまざまなタイム・スマートな恩恵が、約80%の昇給に匹敵するほど、仕事の満足度を高めたのだ。収入、年齢、性別、学歴、業界、企業規模、雇用者の種類、企業収益などの影響の調整を行ったあとでさえ、この結果は変わらなかった。

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