なぜ露呈したのか、新型コロナのグローバルパンデミックの対応は、世界中の国がそれぞれ多様なアクションを取る。そのアクションに国民のIDやそれに基づくサービス、感染のデータ、検査のサービス、病床の把握、ワクチンプロセス、そして、ロックダウンなどの有効手段への予測など、デジタル環境を積極的に用いている国と、そうでない国の差が、どの国民にも広く理解されてしまったからである。
国民はデジタルサービスの力を理解している。しかし、わが国はデジタルサービスを他の国のようにこの歴史的有事に利用できなかったことも理解した。だから、「デジタル敗戦」という認識を日本国民は持ったのである。
すべての国民のための都市と地方の使命
個人情報に関係する国民へのサービスは、基礎自治体を含む自治体が主体となることに原則がある。この原則論の単純化が情報システムやデジタルデータの形式の独立性を誘導し、縦割りで個別化されたデータ構造や情報システムが多数存在する要因となってきた。
一方、2009年に切羽詰まったエコポイントシステムのために政府情報システムに彗星のように採用されたクラウドシステムは、行政情報システムにとっての歴史的黒船来日事件だった。官邸と官僚トップの英断が実現したことだった。政府の中央集権システムであったことも成功の理由だ。残念ながらクラウドの出現は、あまりのパラダイムシフトのためか、全体の行政システムとしては一過性の事件に終わった。
クラウドシステムの特徴は、発注母体の詳細な自律的で多様なサービスのポリシーが、基盤となるシステムに影響を与えずに独立して設定できることにある。逆の言い方をすると、適切な相互運用可能なクラウドシステムが、中央省庁と地方自治体のシステムとして整備されれば、自治体が主体で既存サービスの効率化や新たなサービスの創設を、極めて低いコストで早く実現することができる。
そのため、デジタル庁の設立を機に、地方情報システムと連携する情報システムは、新しいガバメントクラウドシステムに根本的に移行する必要がある。
すべての地域と人のために
デジタル庁は置いてきぼりを作らない(地域と人で100%のデジタルサービスのカバレージを実現する)という目標を掲げている。
国民一人ひとりに届くサービスは、警察、郵便、保険、消防、学校、基礎自治体などが担っている。これらの体制でもたらす安心と安全の質は世界でももっとも高いレベルだ。これらのステークホルダーが、デジタル社会においてのサービスを総合的に組み込むことにより、全国をカバーする新しい日本の社会環境を構築できる。
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