日テレ藤井アナ「相手に本当に届く」言葉の選び方 「人の少ないスクランブル交差点」をどう表現?

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一方で、あるとき、地震で被災したご自宅の前にいた60代の男性に、どんな揺れだったか、どうやって逃げたのか、ご家族は無事だったのかなど、許可をいただいたうえでお話を伺っていると、逆に私たちのことを心配するような顔で、こんなことをおっしゃいました。

「テレビなのにカメラ回さなくていいのかい?」

もちろん、カメラを回したいとは思っています。でも、被災された方との関係がしっかり構築できてからじゃないと、やっぱりカメラは回せないのです。

何回か一緒に取材に出てくれているカメラマンは、それがわかっていて、遠くから「いつでもいけるよ」とスタンバイしてくれています。カメラマンによっては、商売道具のカメラを地面に置いて、一緒に話を聞いている人もいます。

時間はかかるけれど…

この方法だと、カメラを回し始めるまでどうしても時間がかかるのですが、お気持ちを聞いたうえでのお話には「本当の言葉」があふれます。

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表情からは想像もできないほどのつらい思いや、それでも前を向きたいという気持ちが、ご自身の言葉となってあふれてくるのです。

そうなるともう取材ではなくなり、1人の人間として聞いています。だから、カメラが回っていてもあまり関係なくて、自分にできることは何かを真剣に考えるようになるのです。

そのようにしてお話を聞くことができた方々とは、その後も、長くお付き合いが続いています。

もし私が、日本を代表する知名度の高いキャスターだったら、こんな時間のかかるやり方は必要ないのかもしれません。でも、私がそんなすごいニュースキャスターになれたとしても、1人の人間として丁寧に取材をしたいと思っています。

Q.あなたは1人の人間として、何を話しますか?
藤井 貴彦 日本テレビアナウンサー

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ふじい たかひこ / Takahiko Fujii

1971年生まれ。神奈川県出身。慶應義塾大学環境情報学部卒。1994年日本テレビ入社。スポーツ実況アナウンサーとして、サッカー日本代表戦、高校サッカー選手権決勝、クラブワールドカップ決勝など、数々の試合を実況。2010年2月にはバンクーバー五輪の実況担当として現地に派遣された。同年4月からは夕方の報道番組「news every.」のメインキャスターを務める。

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