日テレ藤井アナ「相手に本当に届く」言葉の選び方 「人の少ないスクランブル交差点」をどう表現?
結局、私は「今テレビを見ているみなさんのご協力で、人との接触が防げています」
と、お伝えしました。この交差点にいない人は、テレビの前にいるかもしれないと思ったからです。
もっと多くの人に伝わるメッセージもあったはずです。しかし私の言葉は、テレビをご覧になっている方にしか届きません。だからこそ、今時間を共有しているみなさんにメッセージを伝えようと考えたのです。私は、誰かを批判することよりも、誰かを励ますことを選びました。
この言葉に対する嫌悪感もあると思います。
しかし私は、「政府にはしっかりとした対策を求めたいものです」といったようなコメントで、いただいた数秒の機会を消費したくなかったのです。
見栄えのいい言葉だけが届くのではなくて、鋭い批判だけが力を持つのではなくて、相手を頭に思い浮かべた言葉こそが届くのだと信じています。
「現場取材」で大切にしていること
私が本格的に夕方のニュース担当になったのは30歳を過ぎた頃でした。考えてみると、20年近くニュース現場での仕事が続いていますが、その間、いろいろなニュースで取材に出ました。近年は地震や豪雨などの自然災害が多く、悲しい現場にも直面します。そんな状況ですから、取材には細心の注意を払ってきました。
例えば、ドラマなどで見る報道取材クルーは、カメラを担いでどんどん被災地に入っていきますが、私たちはそうしません。
カメラマンにはまず、被災地全体の撮影をお願いして、その間に私とディレクターだけで、マイクも持たずに道を歩き、お会いした人に「お話だけ」を聞くのです。
災害発生直後は、その不安からか、被災されたみなさんが普段より多く、話をしてくださいます。でも、取材を終えてからしばらくすると、自分がたくさん話してしまったことを後悔される人もいます。またその一方で、すでにほかのメディアがずんずん被災地に入ってしまって、被災されたみなさんのマスコミに対する感情が悪化している場合も多くあります。
ですから、まずは、そこで生きてきたみなさんがどんな気持ちでいるのかを理解してから取材したい、そんな思いが強いのです。私たちは、自分たちの都合でカメラを回し始めないようにしています。
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