日本を滅ぼす「企業の少子高齢化」という大問題 「起業の天才!」著者が語る「起業という希望」

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大西:これをネットでやったのがGoogleです。車関連のワードで検索した人のページに車の広告を出すので、非常に効率がいい。それゆえ、ネット広告はネットビジネスの収益の柱になっています。

このビジネスのモデルを30年以上も前に、紙媒体でやっていたのが江副氏なのです。つまり、日本人が情報産業を不得意としているわけではないのです。江副氏はGoogleのラリー・ペイジやセルゲイ・ブリンが登場するはるか前に彼らと同じことを考えて、当時はまだインターネットはないから、紙媒体でやっていたのです。

しかも、その紙の情報もオンラインに移そうとしていました。残念ながら実現する前に逮捕されてしまったので、頓挫してしまいましたが、もし、あの時実現していたら、平成という時代はまったく違う30年になったのではないかと考えます。非常に惜しいことだったとつくづく思います。

しかし、現実はそれどころか、リクルート事件で世間がドン引きするような叩かれ方をされてしまったので、情報産業自体がいかがわしい仕事だと思われるようになってしまいました。

「権限と収益責任」が「使える人材」をつくりだす

――日本からジェフ・ベゾスのような起業家が生まれるには、何が欠けているのでしょうか?

大西:江副氏は世の中の先の先が見えた人であると同時に、マネジメントの天才でもありました。小さいころからコンプレックスがあって、どうやったら人に認めてもらえるのかを気にしているような人で、「自分は弱い、自分には欠点がある」ということも知っていました。

だから、自分より優れた人に働いてほしいとつねに思っていましたし、そのためにいろいろな手を打っていました。その江副氏が決まり文句のように周りの人に言っていたのが、「君はどうしたいの?」という言葉です。

日本では会社でも学校でも「君はこうしなさい」と上から押しつけるのが通常です。そして、その言いつけを忠実に守る人が成績もよくなり、会社でも評価が高くなります。

皆、自分のやりたいことがないわけではないでしょう。でも、自分の属する組織のために自分を殺して貢献するのがよいことだと教わるので、早い段階で自分を抑え込んでしまうのです。これでは、発想豊かな人材は育ちにくくなってしまいます。

逆に言うと、このしがらみから解放されるから、日本の選手がメジャーリーグに行くと、輝きを放つのではないかと思います。「俺はこうしたい」を貫けるから。

加藤:確かに、大谷翔平さんにしてもダルビッシュ有さんにしても、楽しそうにプレイしていますよね。野球以外では将棋の藤井聡太さんとかにも、同じ雰囲気を感じます。野球にしても将棋にしても、数字で評価が決まるから、余計なしがらみがないのが関係していそうですよね。

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