日本を滅ぼす「企業の少子高齢化」という大問題 「起業の天才!」著者が語る「起業という希望」

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大西:日本で起きていることは、企業の少子・高齢化です。企業の出生率が極端に落ちていて、平均年齢がどんどんどんどん上がっている。一方で時代はどんどん変わっていくから、いまだに「トヨタ頑張れ」とか期待することになってしまっているのが現状です。しかしトヨタだって、人間にしたら随分なおじいちゃんなわけですよ。

対談はZoomウェビナーで配信された。左から大西康之氏、加藤晴之氏、宮台由美子氏、吉見侑悦氏

新しい会社が出てくる土壌に欠けているので、日本経済は代謝しない、よって成長もしない。このままだと、ずーっと尻すぼみになってしまうのは明らかです。一方で、中国やインドからは新しい企業がバンバン出てくる。こういう国と日本はどうやって伍していくのかというのが、私の1つ目の問題意識でした。

ではなぜ、日本では起業が少ないのか。理由は明白で、起業とかアントレプレナーは、日本ではイメージが悪いのです。今までにないビジネスを興したり、若者がビジネスを始めると、「いかがわしい」と言われてしまうのです。

なぜこんな風潮ができ上がってしまったのかをたどっていったら、三十数年前のリクルート事件に行き当たります。それが、リクルートについて書いてみたいと思ったきっかけです。

加藤:ソフトバンクや楽天など、日本のIT業界をリードする会社にはリクルート出身者がいっぱいいて、みんな元気です。リクルートという会社に何か秘密があるんじゃないかと思って、取材を始めてみたのですが、まぁ江副浩正って人は驚くほど評判が悪い。

リクルート事件の首謀者として極悪人のレッテルが貼られてしまったことで、起業家として何をやったかはまったく語られてこなかったのですが、実は起業家としては天才だったのです。

「世界最先端の情報産業」を興した江副浩正

大西:本を書こうと思ったのには、もう1つ理由がありました。

失われた30年の間に、アメリカではGAFAができて時価総額200兆円とか、すごいことになっている。一方、日本からは世界的なネット企業は1社も生まれていません。

そうこうするうちに、「日本にはネットは無理」といった諦めの風潮が根づいてしまいました。一方で財界の長老たちは、日本ではそういう怪しげなビジネスではなく、汗水たらして「モノづくりで勝負する」みたいなことを言っているのですが、この風潮も変えたいと思っていました。

江副氏は「売りたい人」と「買いたい人」を出合わせる情報誌を作りました。それ以前はマス広告しか車の情報を届ける方法がなかったけれど、マスだと不特定多数にばらまくことになる。これでは「車を欲しがっている人に車の広告を届ける」のは、天文学的に低い確率になってしまいます。

一方で、『カーセンサー』を手に取る人は車を探している人なので、コンビニの棚から手に取った段階で出会いが生まれます。

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