中国鶏肉事件、ささやかれる"政府の陰謀説" 食品不正の泥沼、「外資の安心神話」は崩壊した

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なぜこうした問題を何度も繰り返すのか。これには、法律が求めている規制がほとんど有効に行われないことが深く関係している。当局が法を執行する際に自分たちの価値判断(しばしば賄賂や接待などの利害関係)に基づいて「選択的」に取り締まりを行ったり、行わなかったりしているからだ。

日本人が中国の食品から身を守るすべは?

今回の上海福喜の不正についても、業界ではかなり前からうわさに上っていたと言われている。だが、上海市の食品検査当局が動くことはなく、不正が判明した途端にまるでアリバイ作りのように慌てて動きだすのは、過去の食品不正のときも何度も繰り返された光景だ。

今、中国人は自国産の粉ミルクを買おうとせず、できるだけ香港や日本の粉ミルクを手に入れようとしているなど、中国の食品から自分の身を守ることを考えている。日本はその中国から大量の食材を日々輸入し、食べ続けている。タケノコやウナギやハチミツ、そば粉など、われわれの日々の食事に欠かせないものの大半が中国産。日本人は食品でも「脱中国」を目指すべきか、あるいは、より徹底した監視体制を組むのか。

日本人も自らが身を守ることを真剣に考える段階にあることが、米国系すら「不正」の温床にはまってしまった今回の事件によって、あらためて印象づけられたと言えるだろう。

野嶋 剛 ジャーナリスト

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のじま つよし / Tsuyoshi Nojima

1968年生まれ。上智大学新聞学科卒業後、朝日新聞社入社。シンガポール支局長、政治部、台北支局長などを経験し、2016年4月からフリーに。仕事や留学で暮らした中国、香港、台湾、東南アジアを含めた「大中華圏」(グレーターチャイナ)を自由自在に動き回り、書くことをライフワークにしている。著書に『ふたつの故宮博物院』(新潮社)、『銀輪の巨人 GIANT』(東洋経済新報社)、『ラスト・バタリオン 蒋介石と日本軍人たち』(講談社)、『台湾とは何か』(ちくま書房)、『タイワニーズ  故郷喪失者の物語』(小学館)など。2019年4月から大東文化大学特任教授(メディア論)。

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