なお両社は、「ESG」の「G」に問題があるわけだから、ESG投資を行う資金の投資対象から外れるのが普通に思えるが、悪材料が株価に十分織り込まれた時点で投資対象から除外し続けることが純粋な投資として適切であるとは限らない。現に経産省関係者の「働きかけ」が話題になったハーバード大学の基金は不適切会計後の東芝に投資して大いに儲けているではないか。
こうした事情を考えると、「ESG投資」が投資戦略として非合理的でばかばかしいものであることがよくわかる。
投資家には、外面のいい企業も、ダメな企業も、区別せずに評価するクールな客観性が求められる。ESG投資を社会運動にしたい人たち(実際には、同時に「商売」にもしたい人たちでもある)には怒られるかもしれないが、お金は大事なので、早めにわかっておくほうがいい。
「新TOPIX=プライム指数」ではない
さて、東証プライムに残りたいと考える企業にとっては「プライム市場に残るとTOPIXの採用銘柄から外れずに済むだろう」という予想が働いているようだ。
東証1部上場企業を対象とする株価指数TOPIX(東証株価指数)の対象銘柄となることによって、TOPIX連動を目指すインデックスファンドの採用銘柄として一部上場企業の株式が半ば自動的に買われて保有されてきた。経営者にとって、インデックスファンドは「安定株主」だ。
今やTOPIXをターゲットとするインデックス運用の資金は50兆円を超えるし、日銀の爆買いの対象ともなったETF(上場投資信託)では、TOPIX連動のものがざっと35兆円ある。経営者が「わが社が、プライム落ちで、TOPIXから除外されたら大変だ」と思っても無理はない。
実際、市場の再編を検討する議論の際には、成長しないし、ガバナンス改革に積極的でもない企業の株式がTOPIX採用銘柄であることによってインデックスファンドに自動的に保有されることを阻止したいという、一種の懲罰感情があったように思われる(「有識者」は妙なところに力が入る案外幼稚な生き物だ)。
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