早めの梅雨入りに、緊急事態宣言の延長が加わって、冴えない気分の5月末だが、いいニュースが飛び込んできた。次期衆議院選挙で、日本維新の会が、国民に無条件で一定の額を支給するベーシックインカムを公約に取り上げるという。筆者は長年ベーシックインカムを推している。率直に言って、すぐに導入の機運が盛り上がるとは思えないが、政策として公に議論されるのは良いことだ。
ベーシックインカムの誤解を解こう
ただ、維新の会には、ぜひ政策としてのベーシックインカムの長所を正しく理解した議論をお願いしたい。話題性だけで取り上げて、不適切な反論に怯むようではベーシックインカムに対して「贔屓の引き倒し」になりかねない。
以下、維新の会に知っておいてほしい「ベーシックインカムの要点」を3つ取り上げる。
(1)一律給付が良く、お金持ちにあげても問題はない
ベーシックインカムに対する直感的な反論で、最も典型的なものは「お金持ちにもお金をあげるのはおかしい」というものだ。例えば、現金の給付には所得制限をつけるべきだと言う。しかし、所得制限付きのベーシックインカムは、そもそもベーシックインカムではない。
富の再分配の効果は「差額」で見なければならない。セーフティーネットとして一律の現金給付を行っておいて、お金持ちからは税金をたくさん取ればいい。給付と納税の差額が再分配の効果になる。課税が公平であれば、制度全体として公平になる。給付を調整し、さらに税金についても調整するシステムは大変複雑であり、コストや手間が余計に掛かる。加えて、政府や自治体といった「お上」に余計な裁量を持たせることになる。
例えば自治体が、支給対象者の所得や資産を調べて、受給資格があるかどうかを判断するような仕組みだと、生活保護をあてにしていてもそのお金をもらえないかもしれない。セーフティーネットとして不安定だし、所得や資産の調査等に手間とコストが掛かる。
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