(3)ベーシックインカムは徐々に導入することが可能
既存の社会保障を、ベーシックインカムに置き換えていくことは、行政の効率性の観点からも、望ましいことだろう。しかし、それを一気に行う必要もないことを知っておきたい。
ベーシックインカムは、小さなサイズから徐々に始めることもできる仕組みなのだ。いきなりすべてを保障するセーフティーネットを作ろうとする必要はない。
例えば、維新の会の本拠地とも言える大阪府で、一人1万円からベーシックインカムを支給するようなことが、府内の課税さえ独自に可能なら実現できるはずだ。引越しによる「タダもらい」を防ぐためには、「大阪ベーシックインカム」は、例えば「府内に転居して2年目から支給する」とでもすればよかろう。
もちろん、全国一律にできる方が好ましいことは言うまでもないし、大きな社会的セーフティーネットと所得の移転について一気に合意ができれば、それを実行することも難しくはない。生活保護や雇用保険は比較的短期間に移行できるだろうし、年金もベーシックインカムを導入しながら徐々に縮小する形で時間を掛けた移行が可能なはずだ。
なお、医療保険(わが国では健康保険)に関しては、医療に関する情報の非対称性を考えると、「ベーシックインカム+民間の医療保険」への置き換えはやらないほうがいい。国全体が外資系の保険会社のカモにされる危険もある。アメリカ風の医療制度を望む国民は少ないはずだ。
ともかく、社会的な合意が形成されさえすれば、ベーシックインカムはその範囲で比較的簡単に実現できる制度なのである。そしてベーシックインカムの大きな長所の1つは、行政が効率化できることだ。生活保護にしても雇用保険にしても年金にしても、多くの人員を要し手間がかかりコストがかかっている。これらをベーシックインカムに置き換えることで行政のコストは劇的に削減できる。
選挙向けには「行政を効率化しよう」がわかりやすい
選挙向けには「ベーシックインカムを導入して、行政を効率化しましょう」だろうか。「ベーシックインカムで、公務員をリストラしましょう」とまで言うと、政治家の発言としては言いすぎになるかも知れない。
付け加えると、ベーシックインカムは、それそのものではなくとも「ベーシックインカム的」な制度を導入することで、少しずつ達成に向かうこともできる。例えば、国民年金(基礎年金)の保険料を全額国庫負担にする政策は相対的な貧困層にとって恩恵が大きい「ベーシックインカム的」な政策だろう。若い非正規労働者などは喜ぶのではないか。将来の無年金者を減らすこともできる。
「一律平等に恩恵が及んで、相対的貧困者の負担を軽くする政策」は「ベーシックインカム的」だと言える。政策の評価軸として「ベーシックインカム的であるか否か?」は有効な視点だ。ベーシックインカムは、格差問題に対する最終兵器であると同時に、「議論に強い政策」だ。日本維新の会が、有益な議論をしてくれることに期待したい(本編はここで終了です。次ページは競馬好きの筆者が週末のレースを予想するコーナーです。あらかじめご了承ください)。
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