簡単な思考実験をしてみよう。仮にひと月7万円のベーシックインカムを支給するとしよう。これに対して所得の少ない国民50%に対してひと月4万円分を増税し、所得の多い国民50%に対して10万円を増税するとどうなるだろうか。(4+10)÷2=7だから、増税額とベーシックインカム支給額は同額で差し引きゼロだ。そして、実質的な効果として、高所得者から低所得者に対して毎月3万円が移転されることになる。
資産にも課税、マイナンバーともひもづけ
なお、思うに増税は「所得」に対してだけでなく「資産」に対しても行うことが妥当だ。先日、金融所得への課税について考えている時に以下のような事例に気がついた。100億円持っていてこれをほぼゼロ金利の普通預金に置いているだけの「お金持ちA」と、90億円持っていてこれを投資に回して1年間に10億円稼いだ「お金持ちB」がいるとしよう。
現状では、お金持ちBの金融所得10億円に対して2億円強の課税があり、お金持ちAの資産にはほとんど課税されないが、「リスクを取って投資して収益を得た」Bに対してだけ罰則的な課税があるのは何かおかしい。
お金を遊ばせているお金持ちAよりも、Bの方が多く課税されるというのは、納得性が乏しいではないか。金融資産に不動産等の実物資産を含めて、資産を時価評価して広く課税の対象とすることが望ましい。経済格差への対策としても、資産への課税強化が良い。
そして、将来はマイナンバーと金融口座をひもづけして、ベーシックインカムの支給と課税との「差額」を清算するといい。いわゆる「負の所得税」(やや正式には現在「給付付き税額控除」という何とも冴えない言葉で呼ばれている)と実施要領は同じだ。実は、ベーシックインカムの効果は基本的に負の所得税と同じだ。負の所得税の所得捕捉が完全なケースがベーシックインカムだと思うといい。しかも、ベーシックインカムの方が仕組みは簡単だ。
ところで、先日筆者はマイナンバーカードを申請した。申請自体はスマートフォンで簡単にできた。しかし、待つこと約2カ月、やっと受け取ることができるという連絡が来た。だが、今度は「区役所に受け取りに来い」という。そこで区役所に行くと、担当者の対応は親切だったが、窓口に合計4回呼び出されて、かれこれ1時間近くを要した。何と効率の悪いことか。
昨今話題のワクチン接種の状況を見ても、わが国の行政の非効率性は残念だ。日本がもはや「先進国」と呼べないことを実感する。成長している「新興国」でもないので、「元先進国」とでも名乗るといいのだろうか。
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