交易条件の悪化が日本経済をさらに圧迫している 仕入れ価格を転嫁できず企業のコスト増が続く

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この点について、日銀短観と同様の企業調査であるアメリカのISM製造業「価格指数」との比較が興味深い。調査対象の違いなどもあることから、単純比較できるものではないが、日銀短観の大企業・製造業の仕入価格判断DIとアメリカISM製造業「価格指数」を比較すると、実は日本のほうが指数の上昇が限定的である。

日本とアメリカ、製造業の価格転嫁に明確な差

この背景には、「日本のほうが、コスト増が限定的で済んでいる」というわけではなく、「川上」から「川下」における企業の価格転嫁力の差がある。ISM価格指数は一定水準を上回るとPPI(生産者物価指数)の中間財と連動しやすい傾向があることが知られている。アメリカでは素材関連の「川上」だけでなく「川中」や「川下」の企業も「仕入れ価格」が上がったと報告している一方、日本では価格上昇が「川上」に限定さているのだろう。その結果、日本の方が価格指数は伸び悩むことになる。

アメリカと日本とでは原材料価格の「しわ寄せ」が生じる層が異なることが予想される。つまり、アメリカでは「川上」から「川下」まで価格転嫁が進みやすいため、PPIの中間財やCPI(消費者物価指数)が上がりやすい。つまり、消費者のコスト負担が増える。一方、日本では「川中」から「川下」の企業がコスト増を飲み込む構造で、企業のコスト負担が増える傾向にあると言える。「川中」から「川下」の企業を中心に、日本企業には「我慢」の時間帯が続いている。

末廣 徹 大和証券 チーフエコノミスト

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すえひろ とおる / Toru Suehiro

2009年にみずほ証券に入社し、債券ストラテジストや債券ディーラー、エコノミスト業務に従事。2020年12月に大和証券に移籍、エクイティ調査部所属。マクロ経済指標の計量分析や市場分析、将来予測に関する定量分析に強み。債券と株式の両方で分析経験。民間エコノミスト約40名が参画する経済予測「ESPフォーキャスト調査」で2019年度、2021年度の優秀フォーキャスターに選出。

2007年立教大学理学部卒業。2009年東京大学大学院理学系研究科物理学専攻修了(理学修士)。2014年一橋大学大学院国際企業戦略研究科金融戦略・経営財務コース修了(MBA)。2023年法政大学大学院経済学研究科経済学専攻博士後期課程修了(経済学博士)。

 

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