日銀短観(2021年6月調査、調査全容)によると、消費者物価指数と直接関連する3つの業種、「小売」「対個人サービス」「宿泊・飲食サービス」について、国内での製商品・サービス需給判断DI(<「需要超過」-「供給超過」>の回答比率)が依然として弱いことが示された。
具体的には、全規模ベースで「小売」マイナス13(前回調査比プラス2ポイント)、「対個人サービス」マイナス39(同プラス1ポイント)、「宿泊・飲食サービス」マイナス72(同プラス1ポイント)となり、先行き(2021年9月予測)はそれぞれマイナス12、マイナス34、マイナス67だった。消費者レベルの物価を考える際、これらの業種の需給バランスを確認することが重要であると、筆者は先輩エコノミストに教わったことがある。
コロナ禍の影響の大きい業種を直撃
足元ではコロナ禍の影響が特に大きい「対個人サービス」と「宿泊・飲食サービス」のマイナスがかなり深い状態が続いている。
特に、感染抑制のための経済活動の自粛要請が続いている「宿泊・飲食サービス」では、コストの増加が先行していることがわかる。これらの業種では、コロナ禍による営業自粛の影響が懸念されているが、その陰に隠れてコストの増加が業績の重石となっていることも見逃せない。
長期的なデフレ構造の継続によって価格転嫁力が弱いと言われる日本企業では、「川下」だけでなく「川中」の企業のコスト負担も懸念される。日銀短観によると、大企業・製造業の仕入価格判断DIが29と、3月調査の15からまとまった幅で上昇するなど、コストの増加が示された。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら