それから1年が少し経過したところで、実際にお見合いして交際した晴美さんは50歳の派遣社員である。
当初気になった「30代後半の看護師」とはかなり異なるが、彼女のどんなところに心惹かれたのだろうか。
同じ土俵で話せる
「私はとにかく自分と同じ土俵で会話できる人を探していました。マッチングした人とはネット上でやり取りをしてからお互いのプロフィールを見せ合う仕組みです。でも、私の文章の意図をちゃんとくみ取って返信してくれる人はほとんどいませんでした。晴美さんはその数少ない一人です」
相手の話はちゃんと聞く姿勢がある正治さんだが、スイッチが入ると怒涛のように話す傾向がある。自己主張したいというよりも、順序立てて漏れなく説明しないと気が済まないのだろう。
「晴美さんは同じ土俵で話せるし、否定せずに肯定的に聞いてくれます。交際してからLINEでやり取りをしていて、『もっともっと幸せにするよ』と伝えたことがありました。それをすごく喜んでくれてスクショしたと返してくれたんです。自分にはこの人しかいない、と思いました」
何でも思い切り話せて、しかも自分とは違う反応を示してくれる相手――。遠い昔に離れ離れになった相棒と再会したような気分になったのかもしれない。長く実家暮らしをしていた晴美さんも同じ気持ちだった。
「両親との仲はいいほうですが、気を遣って『いい子』でいようとしていました。正治さんとの2人暮らしはとにかく楽。料理と掃除は私がメインでやっていますが、部屋のインテリアも含めて私の好きなようにやらせてもらっています。私はジャイアンとサザエさんを合わせたようなキャラクターらしく、正治さんからは『ジャイアンサザエ』と呼ばれていますから」
ちなみに洗濯は「小物干しがバランスを崩して傾くのが嫌い」な正治さんの担当。買い物はたいてい一緒に出かけて重いものは持ってくれるらしい。パソコンを自作するほどの腕前なので機械関係も正治さんにお任せだ。
唯一ぶつかるのは、正治さんがモノを集めすぎるところ。革製品だけでなく書籍や花瓶などにも興味を示し、それを部屋の中に並べたがる。コレクター気質なのだろう。2LDKの間取りのうち、2人の寝室と筆者がお邪魔しているLDKの他にある1室は「とてもお見せできない」状態らしい。そういえば、テレビ台のところに変な人形たちがいるぞ。
「スミスキーです! 蓄光素材なので部屋を暮らすると光るんですよ。でも、増やすと晴美さんに怒られます」
肩身が狭そうな振りをしながらも嬉しそうな正治さん。今までの自分を否定も制限もせずに、晴美さんの視点という「オプション」が増えたと独特な表現で新婚生活を説明する。
要は気楽で面白くて仕方ない、ということだろう。インタビュー後、駅までのわかりやすい一本道まで送ってもらって振り返ると2人は仲良く並んで手を振ってくれていた。
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