新築マンションが価格「急騰」押し上げたのは誰? 4月の平均価格は前年から43%増え、1億円突破
加えて、五輪や再開発ブームで建築費が上昇したものの、大手デベロッパーのメジャーセブンはマンション建設工事でもゼネコンとの価格交渉力は強い。逆にゼネコンやマンション建設最大手の長谷工コーポレーションや大手ゼネコンの尻をたたけば、土地情報も入ってくるという塩梅なのだ。
日銀と二人三脚?低金利政策がもたらすもの
こうしたメジャーセブンの“強い追い風”になっているのが日銀の低金利政策だ。
ご存じのように、日銀のマイナス金利政策(長期金利の指標の10年国債の利回りのマイナス化を目指す)で、長期金利が指標になる住宅ローンの金利は大きく下がっている。さらにローン金利のもう一つの指標の短期プライムレートも低いので、変動金利の住宅ローンの金利は年1%割れも珍しくない。
だから、強気な価格設定のメジャーセブンの物件が買いやすいというわけではない。こうした低金利がメジャーセブンのブランド力、収益性をより高くしている。
つまり、低金利によって住宅ローンの金利負担が少なくなって返済総額が抑えられる。その分をマンション価格に載せても購入できるため、マンション価格のレンジが高くなり、それが高級化によるブランド力、収益率を高めるというわけだ。
なかでも大企業の正社員同士の夫婦(世帯年収2000万円超)にとっては、こうした低金利下では、中古になっても資産性が落ちないメジャーセブンの物件は住み替えを考えた、場合によっては転売目的で購入するには魅力ある物件だ。
加えて、裕福な高齢者が相続税対策のためにメジャーセブンの得意客となり、こうした「新富裕層」がメジャーセブンのブランド力を強化しているのである。
その裏では住宅購入層の所得による物件価格の二極化を生み、資産性が維持できない物件を量産しているという側面もある。
冒頭に指摘したように、20年の23区のマンションの平均価格は2度も1億円を突破した。これまでの金融緩和に加え、新型コロナ対策の過剰な金融緩和で、有り余るマネーはますます資産価値の高い都心のマンションに注ぎ込まれる。富裕層にとっては、株高の資産効果で金融資産が増え、不動産投資も積極化、高額化する。
不動産経済研究所によると、20年度の首都圏の坪単価は90万円を超え、バブル経済ピークの90年度に迫る2番目の高い水準になっている。
インフレ率2%を目指した日銀の低金利政策だったが、この目標を今なお達成できずにいる。しかし、マンション価格に限っては目標達成どころか、マンションの平均価格を億ションへと押し上げた。
そればかりか、今の日銀は超金融緩和で、ローンの金利を下げているだけでない。