マヨネーズ値上げの裏で始まる「ステルス値上げ」 原料高騰で迫られる食品メーカーの苦しい選択

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販売数量の回復には時間を要する。キユーピーでは2013年の値上げの際、「お客さまの値頃感が追いつくまでに一定の時間がかかった」(広報)という。

食用油を使う食品は、パンや即席麺、チョコレートや米菓、スナック菓子など多岐にわたる。スナック菓子大手のカルビーは6月30日、秋から「じゃがビー」や「フルグラ」で価格改定や容量変更を行うとを発表した。食用油だけでなく、オーツ麦やココナッツ、じゃがいもなどの原料高騰や、コンテナ不足による物流費高騰の吸収が難しくなったためだ。

これらの原料コストの上昇に悩む食品メーカーは多いが、消費者離れのリスクを恐れて値上げに二の足を踏む企業も多い。そのため、価格は据え置きするものの容量を減らして実質的な値上げを図る「ステルス値上げ」を行う企業もいる。

ある菓子メーカーでは、生産ラインの見直しなどできる限りのことをしたうえで、今夏以降にステルス値上げに踏み切ることを決断した。商品名を聞けば、誰もが知っていると言っていいほど有名な商品だ。

「値上げをすると、その影響で売り上げ減少が1年ほどと長引くが、内容量の変更であれば2~3カ月程度で済む」。ステルス値上げを選択した理由を菓子メーカー関係者はそのように明かす。

過去にステルス値上げを行ったことのある同業他社からは、その選択を擁護する声が聞かれる。「安さが魅力となっている商品の場合、値上げよりも容量減のほうが影響を最小限に抑えられる」。

ステルス値上げにはリスクがある

だが、ステルス値上げには特有の懸念がある。スーパー関係者が指摘するのは「SNSでのハレーション」リスクだ。消費者が内容量の減少に気づきSNSなどで情報を拡散すれば、食品メーカーの予想を超えて売り上げが下がってしまう。売り上げの減少はスーパーなどの小売業者も避けたいところだ。

ステルス値上げの是非についてキユーピーは「非公表にしなければならない情報とは考えない」としたうえで、「一度でも行うと、消費者から『そういう会社なんだな』と思われるリスクがある」と話す。味の素も「原則的に製品の値上げは公表する」という姿勢だ。「値上げの公表は消費者から『ステルス値上げよりはよい』との反応がある」とも話した。

原材料の高騰と消費者の節約志向。食品メーカーはこれまで以上に両者の間で板挟みになりそうだ。

兵頭 輝夏 東洋経済 記者

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ひょうどう きか / Kika Hyodo

愛媛県出身。東京外国語大学で中東地域を専攻。2019年東洋経済新報社入社、飲料・食品業界を取材し「ストロング系チューハイの是非」「ビジネスと人権」などの特集を担当。現在は製薬、医療業界を取材中。

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