東証1部→プライム「517社脱落危機」の衝撃試算 タイムリミットわずか、7月9日に第1回判定結果

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プライム市場の上場維持基準を満たすことができれば、新たな基準で算出されるTOPIXの構成銘柄となる可能性が高い。日本銀行が金融緩和政策の一環として実施している上場投資信託(ETF)購入の対象はTOPIX連動型が中心になっていることもあって、組み入れられれば買ってもらえるというメリットが大きいわけだ。

裏を返せば、市場転落のデメリットも甚大だ。プライム市場から落ちれば、日銀の購入対象から外れるばかりか、株価指数に基準価額が連動するような運用を目指すパッシブファンドからも大量に株を放出される可能性が高い。

そうした事態に陥れば株価暴落もありうる。社会的なブランドも毀損し、銀行借り入れをはじめとする資金調達などにも悪影響を及ぼしかねない。つまりプライム市場への残留は、企業にとって最優先の経営課題ともいえるのだ。

ゆうちょ銀やZホールディングスなども

ところがだ。プライム市場の基準を満たしていない企業は少なくない。東洋経済の試算でも、時価総額500億円以上の有力企業でも、ゆうちょ銀行をはじめZホールディングス、日本オラクルなどが基準を満たさない。

東証1部に上場している2163社を対象とした本誌の試算によれば、実に517社がプライム落ちの崖っぷちに立たされている(詳しいランキングは『週刊東洋経済プラス』で公開している)。

それにしては、「具体的な対策はまだ検討していない」(ある企業の財務担当者)などと企業側の反応は鈍い。7月9日にも、どの市場になるのかを判定する第1回判定の結果が通知されるにもかかわらずだ。

キングジムが時間をかけて対策を講じたことからもわかるように、基準を満たすのは容易なことではない。甘く考えていれば、近い将来、プライム落ちの憂き目に遭うことは間違いない。

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田島 靖久 東洋経済 記者

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たじま やすひさ / Yasuhisa Tajima

週刊東洋経済副編集長。大学卒業後、放送局に入社。記者として事件取材を担当後、出版社に入社。経済誌で流通、商社、銀行、不動産などを担当する傍ら特集制作に携わる。2020年11月に東洋経済新報社に入社、週刊東洋経済副編集長、報道部長を経て23年4月から現職。

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