上場企業の9割が検討するM&A、6つの「買収戦略」 「日本企業が生き残る」ために、何が必要か

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3つめの買収戦略は、「商品・サービスの拡充」です。「自社の既存顧客」に提供できる商材(商品・サービス)をもつ会社の買収です。

「規模のメリットの追求」は比較的リスクが低い

【買収戦略③】商品・サービスの拡充

この戦略では、相手方がもつ商材を自社の顧客に提供し、反対に自社の商材を相手方の顧客に販売するという、いわゆる「クロスセリング」ができる場合もあります。

ただし、ここで注意すべきは「本当に市場・顧客が同じか」ということと、「仮に市場・顧客が同じだったとしても、お客さんがこれまで使っていた商品・サービスからスイッチしてくれるか」ということです。

実は買い手と売り手の顧客の市場は微妙に違うことや、顧客の側で商品・サービスにスイッチング・コストが発生して、顧客にはリーチできても自社の商材に乗り換えてもらえないといったことが往々にして起こります。

したがって、この分野のM&Aは買収したはいいものの、じつは「シナジー」がなかったとなるリスクがあり、「事前のマーケットの見極め」が非常に重要になります。

【買収戦略④】規模のメリットの追求

自社と異なる商圏(エリア)や顧客ベースをもっている同業の買収です。「間接コストや仕入れコスト削減によるシナジー」が出やすいという特徴があります。

最もわかりやすい例は、同じ「商品・サービス」を提供している他地域の会社を買収するというものです。ほかにも、顧客の業界が違ったり(たとえば、自社の顧客と異なる特定の業界の顧客をもっている会社)、顧客の規模が違ったりする(たとえば、自社の顧客は大手企業が中心で、売り手企業の顧客は中小企業が中心)会社の買収もそうです。

M&Aをした場合、売り上げは単純に「1+1が2」になるだけですが、この買収戦略でM&Aをしたときは、管理部門の統合や共同仕入れなどにより、コストは「1+1が2未満」になり利益率が上がります

先ほどの「商品・サービスの拡充」による相乗効果はやってみないとわからない面も多々ありますが、「規模のメリット追求」によるコスト削減はある程度あらかじめ計算できます。

したがって、「規模のメリットの追求」のほうが、「商品・サービスの拡充」のための買収よりリスクは低いといえます。

次ページ「さらなる買収」が必要な場合も…
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