上場企業の9割が検討するM&A、6つの「買収戦略」 「日本企業が生き残る」ために、何が必要か

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1つめの買収戦略は「ライバル企業の買収」です。

ライバル企業とのM&Aは「心理的抵抗」が大きいことも

【買収戦略①】ライバル企業の買収

同業で営業上の競合先となっているライバル企業と経営統合して、経営を効率化するための買収です。ライバル企業とは、つまり「商品・サービス」も「市場・顧客」も同じ会社ということです。

間接部門を統合することでコスト削減がはかれ、シナジーは出しやすいといえます。しかし、ライバル企業とのM&Aは買収される側の「心理的抵抗」があり、そもそも売り手のオーナー社長が嫌がることがあります。また売却したとしても、幹部社員や社員が辞めたり、士気が落ちたりするというリスクもあります。

一般的にM&Aは「同業」よりも「異業種」の買い手のほうがいい条件をつけがちです。それは、買い手がもっていないノウハウやビジネスモデルに対して価値がつくためです。

したがって、同業ライバル企業同士のM&Aは、「シナジー」はあるものの、売り手サイドの心理的抵抗があったり、また条件提示が低くなったりする傾向があり、検討されるケースは多いものの、実際に成立するのはそれほど多くはありません。ちなみに、「M&Aにおけるシナジー」とは、「2社以上の企業の能力や経営資源をあわせることにより、各社が単独で生み出す価値の合計を上回る価値を生み出す相乗効果」のことです。

【買収戦略②】川上・川下への垂直統合

業界内において「川上」または「川下」にある会社とM&Aをすることを「垂直統合」といいます。

原料の仕入れ、開発の方向を「川上」といい、製造、物流を経て、より最終顧客に近いマーケティング、販売の方向を「川下」といいます。

つまり、「川上企業への垂直統合」とは、仕入れ先(候補)や業務委託先(候補)の買収であり、一方、「川下への垂直統合」とは、販売先(候補)の買収です。

垂直統合によって業界内部での支配力を強め、商品の仕入れ先または販売先の利益を自社グループ内に取り込むことができます。垂直統合のM&Aは、市場での取引よりも、企業(グループ)内での取引のほうにメリットがある場合に起こります。市場取引では、最適な価格と数量で仕入れられないなどの種々の「取引コスト」が発生することがあるためです。

しかし、垂直統合されてしまった会社は、市場競争にさらされる脅威がなくなり、企業努力をするインセンティブが弱まるなどのデメリットが生じることがあります。

したがって、垂直統合のM&Aを行う場合には、「メリット」と「デメリット」を慎重に検討する必要があります。

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