日本人が知らぬ超難関「ミネルバ大学」破壊的凄み 世界のエリートが熱視線、ハーバード蹴る人も

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一方、キャンパスを持たないことは、大学の運営コストの大幅削減を可能にした。ミネルバ大学には、立派な校舎もなければ、スポーツ施設や図書館や食堂、サークル活動のための諸施設もない。大学としての投資は、オンライン上で最高レベルの学生の学びを実現することに集中させている。

ところがこれだけ大学施設を持たない決断をした同大学が、それでもなお優先的に確保している施設が1つだけある。それは世界各地の学寮である。学生たちが共同で学寮に住むことを、ネルソンらは大学が成り立つ根本と考えている。

大学にとって真のキャンパスは都市そのもの

この発想の根本には、大学にとって真のキャンパスとは都市そのものだという認識がある。学生は都市で学ぶのであって、その都市から切断された大学キャンパスのなかだけで学ぶのではない。こうした考え方は、学生たちが世界各地の7つの都市を集団で渡り歩きながら学びを深めていくフィールドワーク型のカリキュラムに見事に表現されている。

彼らは1年次にはサンフランシスコの学寮に滞在し、この都市のさまざまなプロジェクトに参加する。2年次前期はソウルに移る。後期はハイデラバード、3年次前期はベルリン、後期はブエノスアイレス、4年次前期はロンドン、後期は台北である。4年間で世界を二周くらいしながら、異なる社会文化的、政治的環境のなかで、実践的なプロジェクトに関与することを通じて学びを深めるのである。

大学は、学生たちがこれらの都市で良質のプロジェクト型学習を進められるよう、これらの都市のパートナー企業やNPOなどとの連携ネットワークを形成している。キャンパスを持たないことが、逆に世界大の移動の自由の源泉になっているのである。

もちろん、世界の都市を渡り歩いてプロジェクトの現場に参加していくだけでは、同大学が目指す高度な学びは身につかない。ここがオンラインの出番であって、1クラス18人以下の小規模で、各都市の学寮とアメリカの大学本部にいる教師を結び、同時双方向型の授業が毎日のように繰り返されていくのである。

次ページ授業の組み立ては米国のトップ大学と大差ない
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