ドコモ、代理店ノルマを突然「激辛化」した魂胆 インセンティブの大幅カットでショップ削減か
東洋経済が入手したドコモの内部資料によると、例えば「ポートイン」の項目は、4月は達成率120%で満点の30点、100%で20点とされていた。それが5月からは突然、220%達成でやっと満点の30点、100%~130%だと8点しかもらえない形となった。ほかの項目でも、得点獲得の難易度が軒並み引き上げられている。
その結果、ショップは従前と同じレベルの目標達成率では獲得できる点数が下がり、つれて店舗ランクが4~5つ下がることになる。6月には一部項目の基準がさらに厳しくなった。
この評価シートは対象月が始まる3日ほど前にドコモ側から一方的に送られてくるといい、ある代理店関係者は「前触れもなく基準を変えられると、何を基に事業計画や戦略を立てたらいいのかわからない」と話す。
コスト抑制に邁進するドコモ
評価水準の「激辛化」の背景にあるとみられるのが、コスト抑制策を進めたいドコモ側の都合だ。ドコモは2022年3月期の業績見通しで、モバイル通信収入が前年度より622億円下がると予想する。3月26日からオンライン専用の格安プラン「ahamo(アハモ)」を導入したことによる減収影響が手痛いためだという。
それでもドコモは、通信事業の営業減益幅を111億円にとどめることを計画する。売上高のマイナス分に加え、減価償却費と通信設備使用料が各200億円ずつ増える前提が示されているため、単純計算で900億円程度の増益要因がなければ、111億円の減益計画を達成することは難しい。
5月13日の決算説明会でアナリストからこの点を突かれると、ドコモの廣井孝史・財務担当副社長は、「通信事業の減収要因はコスト効率化でカバーしていく予定で、販売チャネルのデジタル化や、当社業務全般のデジタル化等がキードライバーとなる」と答えている。
つまり、モバイル通信収入の減収分を打ち返す大きな押し上げ要因がコスト削減で、代理店はそのターゲットにされているようだ。
だが、実はドコモには春先、ある誤算が生じていた。代理店関係者によると、4月は各代理店が出張販売を強化するなどした結果、高い営業成績で上位ランクを獲得するショップがドコモの想定以上に出たというのだ。そこでドコモは計画通りにインセンティブにかかる費用を抑えるべく、代理店評価の難易度を一気に上げたものとみられる。