1枚15万円、あまりに美しい「葉っぱアート」の世界 コンプレックスを「得意」に変えた作者の人生

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同じように困っている人がいるのではないかと調べていて出合ったのが「ADHD(注意欠陥・多動症)」という言葉です。ADHDの特性と言われる項目をチェックしていくと、ほとんどが自分に当てはまる。

病院に行くとやはりADHDの診断。発達障害の診断を受けて感じたのは、ショックではなく、むしろ安堵でした。これでやっと怒られっぱなしの生活から脱出できる、と退職しました。

自分に言い聞かせたメッセージのような作品。「焦らなくてもきっと芽は出るよ」(写真提供:リト@葉っぱ切り絵)

自分の「弱み」で勝負できる場所へ

診断を受けてから、発達障害について書かれた専門書を読んだりしてもみました。そうすると、例えば多すぎる忘れ物を減らすことはできるのですが、それでもゼロにはできない。どんなに自分が頑張っても“普通”の人と同じスタート地点には立てないのだ、ということに気づいたのです。

自分自身がマイナスのスタートになってしまう場所では、プラスを生み出せないのは当然です。かといってもう30代。ここから新たなスキルを身につけて一人前になるのは時間がかかりすぎるし、資金もない。では、自分が最初から持っているもので勝負できる場所に、身を移せばいいのではないか。

リトさん。ADHDの中でも「多動」の性質がなかったため、大人になるまで自分が発達障害であることに気づかなかったという(撮影:嶋田礼奈)

自分自身がすでに持っているもの。それはコンプレックスです。ADHDの特性である「過剰な集中力」や「こだわりすぎる」という性質。

“普通”の会社員として生きていくにはデメリットでしかなったこの「弱み」を「強み」に変えられる場所で生きていこう。

そう考えて思い浮かんだのが、アートの道でした。「ひとつのことに集中すると、周りの声も聞こえなくなるくらい没頭しすぎてしまう」という性質は、会社員としては「弱み」でしたが、アート制作には「強み」として生かせるはずだ、という確信があったのです。

生活していかなければいけないけれど、お金も学歴も技術もコネもない。まったくゼロの僕が、アートの道で仕事を見つける方法として選んだのはSNSへの投稿です。いわば就職活動です。「毎日1作品投稿する」と決めて、ボールペンイラストからスクラッチアート、粘土絵付けといろいろチャレンジしてみました。切り絵も、そんな試行錯誤のひとつでした。

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