1枚15万円、あまりに美しい「葉っぱアート」の世界 コンプレックスを「得意」に変えた作者の人生

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見る人によっては、懐かしい恋愛を思い出したり、コロナ禍でガマンしている映画館デートをまたできることを願ったり。さまざまな読み取り方ができるストーリーが1枚の葉っぱの上に広がる。「思い出の作品をキミともう一度」(写真提供:リト@葉っぱ切り絵)

ある日、極限まで細かさを追求して自信を持って投稿した作品への反応が薄く、自分の「すごいだろう」という自信が打ち砕かれるのを感じました。

そこから、自分の技術を見てもらおうとするのではなく、見てくれる人が幸せな気持ちになれる作品を作ろう、と考えを転換したのです。それに、技術だったらこれから葉っぱ切り絵を始めて僕の上をいく人も出てくるかもしれない。それ以外のところで勝負しなければ、という思いもありました。

初期の作品。「毎日の積み重ねが君を大きくする」(『葉っぱ切り絵コレクション いつでも君のそばにいる 小さなちいさな優しい世界』(講談社)より)

気づいたのは、リスやクマ、ウサギといった可愛い動物を登場させると、喜んでくれる人が多い、ということです。動物たちを登場させると、葉っぱの上に、どういうわけだか最初から考えていたわけではないストーリーが生まれ、見てくれた人がまたそこにストーリーを考えてくれる。

そのストーリーに「感動しました」「元気が出ました」「涙が出ました」というコメントがもらえるようになっていきました。これは、単に切り絵の技術を見てもらおう、と思っていたときにはなかった反応でした。

「才能」より「継続」

葉っぱ切り絵を始めた当初から決めていたのは「できる限り毎日投稿する」ということです。朝起きたら葉っぱを探しに行き、下絵を描き、2〜4時間かけて切り絵作業をする。毎日それを繰り返してきました。

『葉っぱ切り絵コレクション いつでも君のそばにいる 小さなちいさな優しい世界』(講談社)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします。

さらに、時間をかけるのは、じつは作品のタイトルつけです。できれば状況を説明してしまうタイトルではなく、見た人が、葉っぱの上の物語に想像を膨らませる余地を残したタイトルをつけたい。

なかなか思いつかなくて、2時間くらいかかる日もあります。ようやく思いついたタイトルをつけてSNSに投稿すると、深夜近くになってしまう日も。そして翌日になったらまた下絵描き……という繰り返しです。

何もないゼロだった僕が、今こうしてコンプレックスを「得意」に変えて仕事ができている理由。それは何よりも「才能」より「継続」なのだと思うのです。

(構成:下井香織)

リト@葉っぱ切り絵 葉っぱ切り絵アーティスト

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りと / lito

1986年神奈川県生まれ。自身のADHDによる偏った集中力やこだわりを前向きに生かすために、2020年より独学で葉っぱ切り絵制作をスタート。Instagram(@lito_leafart)、Twitter(@lito_leafart)に毎日のように投稿する葉っぱ切り絵が注目を集める。その作品は、「王様のブランチ」「アッコにおまかせ!」(TBS)、「めざましテレビ」「ノンストップ!」(フジテレビ)といったTV 番組や新聞など国内メディアで紹介されるほか、アメリカ、イギリス、イタリア、フランス、ドイツ、ロシア、イラン、タイ、インド、台湾など、世界各国のネットメディアでも取り上げられる。初作品集『いつでも君のそばにいる 小さなちいさな優しい世界』(講談社)。

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