1枚15万円、あまりに美しい「葉っぱアート」の世界 コンプレックスを「得意」に変えた作者の人生

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15万円で販売された葉っぱ切り絵作品「みんなの夢を乗せて」(写真提供:リト@葉っぱ切り絵)
今年5月のある日。丸善丸の内本店の入り口に、朝9時の開店前から行列ができていた。並んでいる人の目的はこの日に東京での初作品展を迎えるアーティストの作品。コロナ対策により抽選のうえ整理券が配布され、会場に入れるのは1人ずつだ。そして開店後、1番の整理券を引き当てた女性が、展示された30点の中から選び抜いて購入したのは、全作品の中でもいちばん高額な15万円の作品だった。
展示されている作品はすべて、葉っぱでできたアート。小さなリアルの葉っぱ1枚1枚に、緻密で精巧な切り絵が施されている。リト@葉っぱ切り絵というアーティストの手によるものだ。驚くのは、彼がこの葉っぱ切り絵を始めたのは、2020年のことで、それ以前はサラリーマンだったということだ。なぜ会社勤めをやめてアートの道に入ったのか、なぜ「葉っぱ切り絵」だったのか、初の作品集『葉っぱ切り絵コレクション いつでも君のそばにいる 小さなちいさな優しい世界』を上梓したばかりのリトさんに語ってもらった。
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怒られっぱなしの会社員だった

今は「葉っぱ切り絵アーティスト」を名乗っている僕ですが、もともと美術の勉強をしたり、絵を描くのが得意だったりしたわけではありません。ここにたどり着くまでには、さまざまな模索がありました。

大学を出て就職したフードサービス関連の会社には7年間勤め、その後2回転職。けれどその間、上司にはずっと怒られっぱなしでした。自分では真面目に仕事をしているつもりでも、他の人とリズムが噛み合わないのです。

15万円で販売された葉っぱ切り絵作品「ボクもそのおふとんで寝てみたい」(写真提供:リト@葉っぱ切り絵)

例えば、「マグロを切って」と言われて切っていると「いつまで切っているんだ」と怒られる。「もっと適当でいいんだよ」と言われて適当にしていると「もっとちゃんとやって」と怒られる。

たしかに子どもの頃に母に「要領が悪いんだから」と言われたことはありましたが、学生の頃まではとくに目立った問題がなかったので、いったい自分に何が起きているんだろう、と途方に暮れるばかりでした。

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