「変化にうまく順応できる人」が経ているプロセス 組織の変化にはリーダー自身が変わる必要ある

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もう1つ有効な行動は、意図的に、新しい人間関係や新しい場所、新しい考え方などを試してみることだ。それはまるで新しい服を試着して、鏡を見て「これは私に合うかどうか?」と繰り返すようなものだ。

自分が大事にしてきた考えを手放そうとすると、時として、「この考えを手放したら私は私でいられるのか?」と感じる。多くの人にとってそれは恐怖だ。その恐怖と向き合うための有効な方法が、手放すことで空いてしまったスペースを徐々に新しい考えで埋めていくことだ。

新しい始まりを見つけるための「ルール」

私の場合、「自分は身体が弱く長くは生きることができない」という価値観に基づいた行動を手放すことに関しては、手術の10年以上前からマインドフルネスの研究を行っていたことが大きな力となった。そしてこの実体験こそが、トランジションにマインドフルネスが有効なスキルであるということに気付いたきっかけでもあった。

同時に、新しい始まりを見つけるために、私は自分にルールを作った。「あらゆる誘いを断らない」「行ったことのない場所に行く」「方法を知らないことを学ぶ」というものだ。

実際、陶芸を習ったり、行ったことのないマリブでアーティストの友人のパーティーに参加したりしもした。この探検の先は、多くの場合行き止まりだったが、つねに何か新しいことを学ぶことができ、その中で改めて、私は教えることがとても好きだということを再確認できた。結果、新しいスタートを迎えることにつながった。

ここまで説明してきたトランジションのプロセスを「理解する」ことと、「できる」ことは違う。できるようになるためには繰り返しの練習が重要となる。もっとも私は過去20年間、この練習を繰り返し行う学生たちの変化を目の当たりにし、人間の可能性については楽観的に考えるようになった。トランジションのスキルを高めるための練習でも、仲間とともに続けることが有効だ。

(翻訳構成:猪尾 愛隆)

ジェレミー・ハンター クレアモント大学院大学ピーター・F・ドラッカー・スクール准教授

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Jeremy Hunter

「自分をマネジメントできなければ他者をマネジメントすることはできない」というドラッカーの思想をベースに、リーダーたちが人間性を保ちながら自分自身を発展させるプログラム「エグゼクティブ・マインド」「プラクティス・オブ・セルフマネジメント」を開発し、自ら指導にあたっている。政府機関、企業、NPOなどでもリーダーシップ教育を行っている。シカゴ大学博士課程修了(人間発達学)。ハーバード大学ケネディー・スクール修士。日本人の相撲取りの曽祖父を持つ。東京を拠点とするTransformLLC.の共同創設者・パートナー。

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