「変化にうまく順応できる人」が経ているプロセス 組織の変化にはリーダー自身が変わる必要ある

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もっとも、チェンジが起きたからといって自動的にトランジションが起きるわけではない。そこでまず、自分に起きたチェンジと、これから始めようとする自分のトランジションを分けて考えることが出発点となる(図1参照)。そして、マネジメントする対象はこのトランジションということとなる。

では、このトランジションをどのように進めていけばいいのか。これは以下の3つのプロセスをたどることがわかってきている。

チェンジによって最初に進む状態を「Ending Zone」(終わりの受け入れゾーン)と呼んでいる。友人や家族の死、災害、病気、離婚、失業、そして今回のコロナ禍も典型的な外的な変化、チェンジだ。前向きな、卒業、出産、昇進などもチェンジといえ、ここからも自らの変化は迫られる。

このゾーンはチェンジが起きたこと、自分自身にとって何か形を変えることを頭ではわかりながらも、まだそれを受け入れられない状態だ。コロナ禍というチェンジに対して、今このゾーンにいる方も多いのではないだろうか。

各ゾーンを一直線に進む人はいない

次のゾーンを「Letting Go & Exploring Zone」(古いものを手放し、新しいものを探索するゾーン)と呼んでいる。このゾーンでは、何かが終わったことは認識しつつも、次にどうすればいいのかまだわからない。まるで道に迷ったゾンビのようにウロウロしたり、無気力で方向感覚を失ったりしたような気分になり、それまでの自分のようではない感覚になることも多い。まだ完全に形成された自分でもない。

そして、最後に迎えるのが「New Beginning Zone」(新しいものが始まるゾーン)だ。前のゾーンでウロウロとしながら、最終的に、何かがピタッとくる。絶望は一気に活気へととって代わる。新しい感覚にはまだ確信は持てないが、何かしらの充実感や楽しい気分になるのではないかと感じるようになる。そして、新たな道を歩むことを示す確信となる出来事がしばしば起きたりするのもこのゾーンの特徴だ。

大事なポイントは、各ゾーンをきれいに一直線に進む人はほとんどいないということだ。図2のように、次のゾーンへ抜けたと思ったら突然現れ、重りのようにかつての自分へ引き戻す。

「古い仕事への価値観を手放して新しい価値観で判断できるようになったと思っていたら、ある時に不意に古い価値観のもとで対応してしまっていた……」といったことは誰にでも起こることだ。人は過去の慣れ親しんだやり方のほうが楽でストレスが少ないため、元に戻る引力が働きやすいためだ。

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