「変化にうまく順応できる人」が経ているプロセス 組織の変化にはリーダー自身が変わる必要ある
新卒から長年勤め上げた会社を早期退職した生徒の1人は、この儀式で会社員時代に大事にしてきた書類をすべて捨てた。こうした儀式は現代では軽視されがちだが、伝統的な式典やお祭りなどでは、人々のトランジションをサポートするためにも行われていたと私は考えている。
しかし、終わりを受け入れることは、価値観を手放すことのスタート地点に過ぎない。長年共に歩んできた価値観は自分の隅々まで染み込んでいるため、簡単には手放せないことが多い。それを行うのが次のLetting Go & Exploring Zoneとなる。
「手放すこと」を理解する
「かつてはうまくいっていた価値観」を手放し、次のゾーン、New Beginning Zoneへ向かうために有効な行動は2つだ。
1つはそもそも「手放す」ことの理解から始まる。私たちは、日々の暮らしの中で得ている情報を自分なりのフィルターを通して処理し、認識・判断し、行動を選んでいる。そして、価値観や信念、アインデンティティーなどはこのフィルターとしても機能している。よって、「かつてはうまくいっていた価値観を手放す」とは、このフィルターを使わないようにするということでもある。
私たちの脳の知覚能力には限界があるため、パターン化できるものは、フィルターを通じて情報を得て、判断し、行動するという一連のプロセスを無意識にできるようになっている。しかも、大事な価値観であるほどその一連のプロセスは無意識にできるようになっている。例えば、「口臭に気をつける」という価値観のもと、歯磨きを無意識にできる人は多い。
この機能は私たちが生きていくうえで欠かせないが、手放すうえでは障害となる。では、「意識的にこのフィルターを使わずに情報を得て行動を選べるようになる」ためにはどうしたらいいか。それは、情報を取り入れるときに、自分自身の感情や身体感覚・思考を通じて情報を正確に把握するスキルを持つことだ。このスキルは昨今、マインドフルネスとも呼ばれている。
このスキルが高まると、無意識に蓄積してきた古いフィルターに基づく情報への固執を緩和できるようになる。このスキルは誰でも練習を繰り返し続けることで手に入れることができる。関心を持った方は、拙著『ドラッカー・スクールのセルフマネジメント教室』に詳しく紹介をしているのでご覧いただきたい。
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